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雇用契約書のチェックポイント — サインする前に必ず確認
一度サインすると、後から「聞いていない」は通りにくい
📖 8分で読める📅 2026-09-03
「とりあえずここにサインして」と言われ、内容をよく読まないまま名前を書いてしまいました。
インドネシア・バンドン出身のアリフさん(25歳)は、入社初日、たくさんの書類を渡されました。日本語ばかりで、その場で全部を読む時間もなく、担当者に「みんなこうしてるから」とうながされ、言われるまま署名しました。
3ヶ月後、アリフさんは「話と違う」と感じ始めました。面接では「土日休み」と聞いていたのに、シフトには土曜出勤が入っている。残業はないと言われていたのに、毎日2時間。でも、契約書を見返すと、そこには小さな字で「シフト制」「固定残業含む」と書かれていました。口頭の約束ではなく、サインした書面が基準になります。アリフさんは反論できませんでした。
日本では、雇用契約書(労働条件通知書)にサインすることは、「この条件で働くことに同意した」という意味を持ちます。後から「聞いていない」「読んでいない」と言っても、サインした書面の内容が優先されてしまうことが多いのです。
逆に言えば、サイン前にしっかり確認すれば、自分を守れます。会社には、重要な労働条件を書面で示す法律上の義務があります(労働基準法)。その書面のどこを見るべきか——チェックリストにまとめました。
労働条件を書いた書面には「労働条件通知書」(会社が交付する義務がある書面)と「雇用契約書」(労使がサインする契約書)があります(両方を兼ねた書類も多い)。なお雇用契約書の作成自体は法律上の義務ではありませんが、労働条件の書面明示は会社の義務です。サイン前に、以下を必ず確認してください。
01.契約期間と「更新の有無・上限」を確認する
「期間の定めがあるか(有期)」「ないか(無期・正社員)」をまず確認します。有期契約(例:1年契約)の場合、「更新されるのか」「更新の基準は何か」「更新の上限回数はあるか」が書面に明示されているはずです。2024年4月から、有期契約では更新上限の有無も明示事項になりました。「ずっと働けると思っていたら1年で終わり」とならないよう、期間と更新条件は必ず確認してください。
02.「就業場所・業務内容」と、その「変更の範囲」を見る
働く場所と仕事の内容が書かれています。2024年4月から、入社直後の場所・業務だけでなく、将来の配置転換などで「変わりうる範囲」も明示されるようになりました。「東京勤務のつもりが、契約上は全国転勤あり」「事務の予定が、製造現場にも配属されうる」といった範囲を確認してください。特に外国人は、仕事内容が在留資格で認められる範囲かどうかにも関わるので重要です。
03.労働時間・休憩・休日・残業の有無を確認する
始業・終業時刻、休憩時間、休日(何曜日が休みか・週何日か)、そして「所定労働時間を超える残業があるか」を確認します。面接で「土日休み」と聞いても、契約書が「シフト制」なら、シフト次第で土日も出勤になります。口頭の説明と書面が食い違っていたら、サインする前に「面接ではこう聞きましたが」と必ず確認してください。
04.【最重要】賃金の「内訳」と支払い方法を確認する
基本給がいくらか、固定残業代(みなし残業)が含まれていないか、各種手当(通勤・住宅等)、締め日と支払日、控除(税金・社会保険)を確認します。「月給25万円」の内訳に固定残業が入っていないかは特に重要です(求人票の読み方の記事も参考に)。なお「昇給に関する事項」は明示義務はありますが書面でなくてもよいため、書いていない場合は口頭で確認しましょう。
05.退職・解雇に関する事項を確認する
「どういう場合に辞められるか(退職の手続き)」「どういう場合に解雇されるか(解雇の事由)」も書面に明示される事項です。何日前に申し出れば辞められるか、試用期間中の扱いはどうかを確認しておきましょう。これを知っておくと、いざ辞めたいときや、不当な解雇をされそうなときに、自分の権利を守れます。
06.社会保険・雇用保険への加入を確認する
正社員・フルタイムなら、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険への加入は会社の義務です。契約書や通知書に「社会保険加入」とあるか確認してください。記載がない、または「自分で国民健康保険に入って」と言われる場合は、本来加入すべき保険に入れていない違法状態の可能性があります。社会保険は、病気・ケガ・将来の年金の備えになる大切な制度です。
07.わからない言葉は、サイン前に必ず質問する。書面と実態が違えば解除できる
日本語の専門用語がわからないまま署名しないでください。「この言葉の意味を教えてください」と聞くのは、まったく失礼ではありません。むしろ、きちんと確認する人だと評価されます。厚生労働省は多言語の「モデル労働条件通知書」も用意しています。なお、もし明示された労働条件が実際と違っていた場合、労働者はその契約を即時に解除できる権利があります(労働基準法第15条)。サインは「読んで・理解して・納得してから」が鉄則です。
アリフさんはその経験のあと、次の転職では契約書を一行ずつ確認し、わからない点は人事に質問してから署名しました。「土日休み・固定残業なし・社会保険完備」を書面で確認できたことで、安心して働けています。「サインは、読んで納得してから。これだけは守るようにしている」と話してくれました。契約内容に不安があるときは、サインを急がず、労働基準監督署やハローワークの外国人相談窓口(無料)に相談できます。