退職後14日以内の手続きが、あなたを守る
「39度の熱があるのに、病院に行けなかった」
タイ・バンコク出身のナットさん(26歳)は、2024年2月の夜中、タイにいる母親にLINEを送りながら、震えていました。
「ママ、熱が出た。でも病院に行けない。保険がないから。」
既読になりました。5分後、母親から電話が来ました。「なんで保険がないの。どうして」。ナットさんは答えられませんでした。
退職したのは2024年1月31日でした。4年間働いた会社を、次のステップのために辞めました。3月1日から新しい職場が決まっていました。「たった1ヶ月のことだから」——そう思っていました。
退職翌日、職場から「保険証を返却してください」という連絡が来ました。ナットさんはそれが何を意味するか、深く考えませんでした。「会社の保険は終わり、来月から新しい職場で入れる」——それだけ頭にありました。
その1ヶ月の空白が、落とし穴でした。
2月12日、体が重くなりました。翌日には38度を超えました。近くのクリニックに行こうとして、受付で言われた言葉が頭から離れません。「保険証がなければ自費になります。初診料と検査で最低7,000〜8,000円。解熱剤や薬は別途です。」
ナットさんは財布の中身を確かめました。現金4,500円。今月の家賃引き落としで口座の残高はほとんどありませんでした。
「また来ます」と言って、クリニックを出ました。
バスで帰る途中、涙が出ました。悔しさではなく、惨めさでした。4年間、日本でまじめに働いて、保険料も年金も税金も払い続けてきた。それなのに、39度の熱があるのに病院に行けない。
家に帰ってから、布団の中で震えながら市販の解熱剤を飲みました。翌日も熱は下がりませんでした。3日目に職場の先輩に電話して「実は保険がなくて」と打ち明けると、「それ、国民健康保険に入れたのに。退職したときに手続きしなかったの?」と言われました。
「そんな手続きがあるって、誰も教えてくれなかった。」
退職するとき、誰も「14日以内に手続きをしてください」とは言いませんでした。会社は保険証の返却だけを求めました。次のステップは、自分で調べなければならなかったのです。
会社を辞めたとき、または社会保険から外れたとき——退職後14日以内にやることを知っておけば、ナットさんのような状況を防げます。