特定技能1号試験 合格率を上げる「企業の関わり方」
目次
特定技能1号への移行には2つの試験がある
育成就労・技能実習から特定技能1号に移行するには、以下の2つの試験に合格する必要があります。
① 日本語試験(どちらか一方)
- JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト):A2相当(250点満点中200点以上)
- JLPT(日本語能力試験):N4以上
② 技能測定試験
- 各分野の試験実施機関が実施する技能試験
- 学科試験+実技試験の2部構成(分野による)
- 合格点の目安:学科試験は正答率60%以上(分野によって異なる)
なお、技能実習2号を同分野で良好に修了した場合は、日本語試験・技能試験ともに免除されます。育成就労の場合は試験が必要です。
試験の難易度と「合格できない」本当の理由
日本語試験の合格率
| 試験 | 合格率 | 特徴 |
|---|---|---|
| JFT-Basic | 約44%(令和7年6月末・累計・速報値) | CBT方式・当日結果判明・原則毎月実施(国・地域により異なる) |
| JLPT N4 | 約31.6%(2023年第2回実施分) | マークシート・年2回・国際的信頼性高い |
(出典:JFT-Basic 合格率は出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」掲載の試験実施状況(令和7年6月末・累計・速報値)、JLPT は日本語能力試験 2023年第2回実施結果。合格率は実施回・期間により変動します)
> 【2026年8月 新対応】 JFT-BasicはA1・A2.1レベルの判定にも対応(2026年8月〜)。育成就労制度の入国時日本語要件(A1相当)の証明書類としても使用可能になります。
JFT-Basicのほうが受験機会が多く、合格率も高い傾向があります。「できるだけ早く特定技能に移行したい」場合はJFT-Basicを推奨します。
技能試験が「受からない」本当の理由
試験に落ちる原因として多いのは「技能が不足しているから」ではなく、以下の2点です。
① 問題文の日本語が読めない 技能測定試験の問題は日本語で出題されます。N4レベルの基礎的な日本語力はあっても、業務専門用語が入った問題文は読解が難しいケースがあります。
② 試験対策に時間を割けない 毎日の業務が忙しく、試験勉強の時間を確保できないまま受験→不合格→再受験のサイクルが続くパターンです。
JFT-Basic vs JLPT:どちらを選ぶべきか
JFT-Basicを選ぶケース
- できるだけ早く特定技能1号に移行させたい
- 試験当日に合否がわかるので在留資格申請のスケジュールを立てやすい
- 原則毎月実施(国・地域により異なる)のため、1回落ちてもすぐ次の受験が可能
JLPTを選ぶケース
- 国際的に認知された資格として残したい
- 時間をかけてしっかり日本語力を身につけさせたい
- すでに受験申込をしている・勉強が進んでいる
企業のサポートが「合否を分ける」3つの理由
理由1:日本語学習の環境を作れるか
試験対策の最大の近道は、職場で日本語を使わせることだ。テキストより実務の反復が効く。
効果的な取り組み:
- 朝礼・業務指示を日本語で行う(多言語との並行でOK)
- 業務マニュアルを「やさしい日本語」で作成し、日本語を読む習慣をつける
- 週1〜2時間の日本語学習時間を就業時間内に確保する
- N4対策テキスト・JFT-Basic参考書を会社が購入して提供する
- 日本語学習アプリ(無料)の活用を勧める
理由2:試験スケジュールを管理できるか
「そろそろ受けさせよう」では遅い。会場予約も申込期間も、思い立った時には埋まっている。
企業がやるべきこと:
- 試験実施スケジュールを先に調べてカレンダーに登録する
- JFT-BasicはCBT方式で会場予約が必要。早めに予約しないと希望日に受験できない
- JLPTは年2回(7月・12月)。申込期間を逃すと半年待ちになる
- 試験前2週間は残業を減らし、学習時間を確保する
理由3:試験費用を会社が負担できるか
受験料の自己負担が障壁になって受験を先延ばしにするケースがあります。
| 試験 | 受験料(国内) |
|---|---|
| JFT-Basic | 約7,000円 |
| JLPT N4 | 7,500円(2025年から) |
| 技能測定試験 | 分野・区分により異なる(3,000〜10,000円程度) |
受験料の会社負担は法的義務ではない。ただ、自己負担を理由に受験を先延ばしされるくらいなら、会社が出したほうが合格は早い。
技能実習2号修了者の「試験免除ルート」を活用する
技能実習2号を同分野で良好に修了した外国人は、日本語試験・技能測定試験がともに免除されます。
この場合、試験合格証明書の代わりに「技能実習修了証明書」が必要書類になります。
試験免除ルートの注意点:
- 同分野のみ免除(異なる分野の特定技能1号に移行する場合は試験が必要)
- 「良好に修了」の要件:問題行動がなく、実習を計画通り修了していること
- 修了証明書は実習実施機関が発行する
介護分野の追加要件
介護分野は、JFT-BasicまたはJLPT N4に加えて、介護日本語評価試験への合格が別途必要です。
介護日本語評価試験の概要:
- 年複数回実施(日程は公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会が公表)
- 国内・海外の両方で実施
- 介護現場で使われる日本語に特化した内容
技能実習2号(介護)を良好修了した場合は介護日本語評価試験も免除されます。
在留資格変更申請のタイムライン
試験に合格したからといって、すぐに特定技能1号として働けるわけではありません。
試験合格
↓
在留資格変更許可申請(書類準備:約2〜4週間)
↓
入管への申請
↓
審査期間(標準処理期間1〜2ヶ月・混雑期は2〜3ヶ月以上)
↓
在留カード交付・特定技能1号開始
重要: 現在の在留資格(技能実習・育成就労)の在留期限が迫っている場合は、期限2〜3ヶ月前には申請を開始する必要があります。申請中は「特定活動」に切り替えることで就労継続が可能ですが、手続きが必要です。
まとめ:「試験に合格させる」ことが企業の競争力になる
特定技能1号への移行が完了したスタッフは、転職の自由度が高まる。
だからこそ、「試験に合格させてあげた」企業へのロイヤルティは高くなる。試験サポートへの投資は、定着率という形で返ってくる。
試験を個人任せにすると、忙しさに紛れて受験そのものが後回しになる。会社が日程を握り、学習時間と受験料を用意する。それだけで合格までの時間は確実に縮む。



