「育てる」がはじまる3ヶ月──受入れ直後に差がつくOJT設計の考え方

公開 2026年5月 ・ 更新 2026年6月
目次

なぜ「最初の3ヶ月」が3年間を決めるのか

外国人スタッフを受け入れた企業の多くが、入国から数ヶ月以内に「思っていたより大変だった」と感じます。しかし離職データを見ると、実は外国人スタッフの定着率は日本人より高い傾向があります。

出入国在留管理庁のデータによると、特定技能1号の累計離職率は22.4%(最新公表値・法務省 ISA 001449565)。一方、厚生労働省が発表した日本人新卒社員の3年以内離職率は30%以上です。外国人材は、適切な環境さえ整えれば、むしろ長く働いてくれる人材なのです。

では、なぜ「うまくいかない」と感じる企業が出るのでしょうか。多くの場合、問題は「受入れ直後のOJT設計」にあります。


2027年からの育成就労制度で変わること

2027年4月1日に施行される育成就労制度では、企業の育成責任が技能実習より明確に問われるようになります。

特に重要な変化が2点あります。

①育成就労計画の認定が義務化 外国人を受け入れる企業は、1人ひとりに「育成就労計画」を作成し、外国人育成就労機構の認定を受ける必要があります。「入れて、現場に放り込む」では認定を受けられなくなります。

②日本語教育の支援が義務に 入国時にN5相当の日本語力が求められ、3年間でN4(特定技能1号移行要件)まで伸ばすことが企業に求められます。企業は「A2目標講習」の受講機会を提供する義務を負います。

つまり、2027年以降に育成就労で人を受け入れる企業は、最初の3ヶ月から計画的なOJTと日本語教育を実施しないと、制度上の要件を満たせなくなります。


OJT 3ステップ図

OJT設計の3つの原則

原則1:「できること」から積み上げる

入国直後のスタッフに最初から難しい業務をアサインしても、本人も職場も疲弊します。最初の1ヶ月は「確実にできる業務を、確実にこなす経験」を積ませることが最優先です。

業務の難易度を3段階に分け、段階的にステップアップするスケジュールを最初に作っておく。順序を決めずに始めると、できない業務でつまずいた印象だけが本人に残る。

原則2:「言葉」より「見せる」

入国直後のスタッフはN5レベルの日本語力しかない場合がほとんどです。N5は「ひらがな・カタカナが読め、簡単な挨拶ができる」程度のレベルです。

この段階では、口頭説明より「実際にやって見せる」「写真や動画で手順を示す」ほうが圧倒的に効果的です。業務マニュアルを「やさしい日本語」と図解で作成しておくことが、後々の教育コストを大幅に削減します。

原則3:「相談できる人」を作る

孤立が離職の最大の原因です。業務の相談先と、生活の相談先を最初に明確にしておくことが重要です。同じ国籍の先輩スタッフがいる場合は積極的にメンターとして頼る。


受入れ直後3ヶ月のチェックリスト

入国前〜入国1週間以内

  • 住居の準備(布団・調理器具・生活用品)
  • 市区町村役所での住民票登録(入国後14日以内に義務)
  • 銀行口座の開設サポート(在留カード取得後に手続き可能)
  • スマートフォンのSIM契約サポート
  • 社会保険・雇用保険の加入手続き
  • 給与振込口座の確認
  • 緊急連絡先・体調不良時の対応フローの説明

1ヶ月目:基礎固め

  • 業務手順の「見せる型」OJTの実施(口頭説明依存をなくす)
  • やさしい日本語で作成した業務マニュアルの提供
  • 週1回の1on1面談の実施(体調・困りごとの確認)
  • 日本語学習の環境整備(教材の提供、学習時間の確保)
  • 職場のルール・安全事項の説明(母国語資料があれば活用)

2〜3ヶ月目:定着の確認

  • 業務習熟度の確認と次のステップへの移行
  • 日本語学習の進捗確認(N5レベルから着実に向上しているか)
  • 職場の人間関係の確認(孤立していないか)
  • 特定技能移行に向けた試験スケジュールの共有・説明
  • 育成就労計画(2027年以降)に沿った育成目標の確認

やりがちなNG行動

× 「なんとなく慣れるだろう」で放置する 最初の3ヶ月に意図的な育成を行わないと、本人は不安を抱えたまま業務をこなすだけになります。特に問題が表面化しないうちに離職を決意するケースが多く、「突然辞めた」という印象を受けることになります。

× 日本語のマニュアルをそのまま渡す 業務用語が多い日本語マニュアルは、N5〜N4レベルのスタッフには読解が困難です。写真・図解を多用した「現場特化型」の資料を作ることへの投資は、長期的に教育コストを下げます。

× キャリアパスを説明しない 「育成就労から特定技能1号、さらに特定技能2号へ」というキャリアパスを入社時に説明することは、本人のモチベーション維持に直結します。2024年の法改正で、外食業では「キャリアアッププランの作成・交付・説明」が義務化されました。他分野でも早めに整備しておきたい。


まとめ:OJTは「コスト」ではなく「投資」

最初の3ヶ月に丁寧なOJTを実施した企業では、その後の定着率が大きく改善する。

受入れ直後の対応は手間に感じるかもしれませんが、1人の外国人スタッフの採用・入国にかかるコストは、送出機関手数料・渡航費・住居準備費などを合わせると数十万円規模になります。そのコストを回収するなら、入国後3ヶ月の育成設計ほど効くお金の使い道はない。

育成就労制度が本格施行される2027年4月、計画認定も日本語教育も間に合わせるには、仕組み作りは今しかない。

次のステップ

求人を無料で掲載するか、育成就労の準備状況をチェックリストで確認しましょう。

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