「はい」は理解のサインではない──東南アジア人材の返事が意味すること

公開 2026年6月

「はい」問題の構造図

現場でよくある「はい」の落とし穴

外国人スタッフに「わかった?」と聞くと、たいてい「はい」と返ってきます。しかし数日後、まったく違うやり方で仕事をしている──こんな経験はありませんか。

これは外国人スタッフが嘘をついているわけではありません。

東南アジア(ベトナム、インドネシア、フィリピン等)の文化圏では、目上の人から「わかったか」と聞かれたとき、「わからない」と答えることは失礼にあたる場合があります。日本人が海外で「Do you understand?」と聞かれて「Yes」と答えてしまうのと同じ心理です。

理解度が60〜70%でも「はい」と答えてしまう。これが現場の実態です。


なぜ「はい」が危険なのか

「はい」の信頼性が低い状況で最も問題になるのは、重要度の高い情報が「なんとなくわかった」状態で処理されることです。

厚生労働省「令和5年 外国人労働者の労働災害発生状況」(2023年)によると、外国人労働者の労働災害発生率(千人率)は2.77と、全労働者平均の2.36を大きく上回っています。技能実習の在留資格では4.10と全労働者の約1.7倍。言語理解の不十分さが、事故に直結していることが数字に表れています。

安全ルール・機械の操作・緊急時の対応。これらを「口頭で説明して、はいと答えてもらった」だけでは不十分です。


「わかりましたか?」をやめる4つの代替法

① クローズドな質問ではなくオープンな質問に変える

NG: 「わかりましたか?」 OK: 「この機械を止めるときは、どのボタンを押しますか?」

理解しているなら答えられます。理解していなければ答えられません。

② やってみてもらう

口頭での「わかった」確認ではなく、実際に手を動かしてもらいます。手順通りにできれば理解している証拠です。特に危険を伴う作業は必ずこの方法を使ってください。

③ 理解確認カードを使う

「完全にわかった 🟢」「だいたいわかった 🟡」「あまりわからなかった 🔴」の3択カードを作り、口頭確認の代わりにカードを上げてもらいます。声に出して「わからない」と言えなくても、カードなら示せます。

④ 復唱確認をする

説明した内容を、本人の言葉で言い直してもらいます。「今の説明を、あなたの言葉で言ってみてください」と伝えます。復唱の中で間違いがあれば、その場で修正できます。母国語での復唱でも構いません——通訳や同国籍のスタッフに「今の説明を○○さんに自分の言葉で説明してもらってください」と依頼する方法も効果的です。


「はい」の裏にある正直な声

外国人スタッフが「わからない」と言えない背景には、いくつかの理由があります。

  • 「わからないと言ったら怒られるかもしれない」
  • 「また最初から説明されるのが申し訳ない」
  • 「みんなの前でわからないと言いたくない」

これは日本人の若手社員でも同じです。外国人だから特別に起きることではありません。ただ、言語の壁があることで、その傾向が強まるという点が違います。

「わからない」と言える安心感を作ることが、長期的な解決策です。その具体的な方法はSTAGE 4の記事で解説します。


まとめ:「はい」に頼らないコミュニケーション設計を

従来のやり方改善後のやり方
「わかりましたか?」と口頭確認「やって見せてください」と実演確認
説明して終わり説明→実演→復唱→フィードバックの4ステップ
重要事項も都度口頭で伝える重要事項はマニュアルに書いて手元に残す

次のステップ:重要事項を口頭に頼らず伝えるマニュアル設計は、STAGE 2「入社時必須情報の設計」をご覧ください。


> ⚠️ 本記事の情報は2026年2月時点のものです。最新の状況については各省庁の公式発表をご確認ください。

次のステップ

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