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ビルクリーニング分野は、オフィスビル・商業施設・病院・ホテル・学校など、あらゆる建築物の清掃・衛生管理を担う産業です。私たちが日常的に利用する建物の清潔さと快適さを支えているのが、ビルメンテナンス(ビルメン)業界で働く清掃スタッフたちです。
主な業務内容は、建築物内部の清掃全般です。床面の洗浄・ワックスがけ、ガラスの拭き掃除、トイレ・洗面所の清掃・衛生管理、空調設備のフィルター清掃、エレベーターホールやエントランスの美観維持など、多岐にわたります。単に「掃除をする」だけではなく、建物の種類や素材に応じた洗剤の選定、清掃機器(ポリッシャー、高圧洗浄機など)の操作、衛生管理の知識が求められる専門的な仕事です。
ビルメンテナンス業界は、日本全体の高齢化の影響を最も直接的に受けている業界の一つです。清掃業務に従事する労働者の平均年齢は高く、60代・70代のスタッフが現場を支えているケースも珍しくありません。若年層の国内人材の確保が年々困難になるなか、外国人材の受入れは「将来の話」ではなく「今まさに必要な対策」として業界全体で認識されています。全国ビルメンテナンス協会も外国人材の活用を推進しており、業界を挙げての取り組みが進んでいます。
ビルクリーニング分野における外国人材の受入れ状況を整理します。
技能実習「ビルクリーニング」の在留者数:約3,000〜5,000人(推定)。ビルクリーニングは2016年に技能実習の対象職種に追加された比較的新しい職種ですが、着実に受入れ人数が増加しています。なお、技能実習生の総数は全分野合計で45万6,618人(出入国在留管理庁、令和7年末時点)です
特定技能1号「ビルクリーニング」の在留者数:8,395人(出入国在留管理庁、令和7年12月末時点・速報値)。特定技能制度のなかでは中規模の受入れ分野ですが、前年から着実に増加しており、業界の人手不足を背景に今後さらに拡大が見込まれます
主な送出国と傾向:ビルクリーニング分野では、ベトナム、フィリピン、ミャンマーが主な送出国となっています。特にベトナムからの受入れが多く、清掃業務は未経験者でも比較的短期間で基本技能を習得できることから、来日前に清掃業務の経験がない人材でも活躍しやすい分野です
受入れを検討している企業は、今のうちから体制整備を進めておくことが得策です。
ビルクリーニング分野で利用可能な外国人受入れ制度は以下のとおりです。
| 制度 | 対応 | 備考 |
|---|---|---|
| 技能実習 | ○ | 2016年追加。育成就労への移行に伴い新規受入れは順次終了 |
| 育成就労 | ○ | 2027年4月施行。最長3年、特定技能1号への移行を前提 |
| 特定技能1号 | ○ | ビルクリーニング分野特定技能評価試験の合格が必要 |
| 特定技能2号 | ○ | 熟練技能者として在留期間の上限なし。家族帯同も可能 |
ビルクリーニング分野は、技能実習から特定技能2号まで、すべての制度に対応しています。つまり、「育成就労(3年)→ 特定技能1号(5年)→ 特定技能2号(上限なし)」という長期的なキャリアパスが制度上用意されています。特定技能2号へ移れるルートがあると、本人は「日本で長く働ける」と先を見通せる。会社にとっても、手間をかけて育てた人材が現場に残る。両者の利害が一致する数少ない制度設計だ。
先に、はっきりさせておきます。これは「どの国の人が清掃に向いているか」という話ではありません。国籍で向き不向きを決めるのは、採用の判断基準として不適切ですし、法令上も問題になりえます。配置も育成も、国籍ではなく本人の経験・体力・日本語の習熟度・希望で決めてください。そのうえで、国によって事前にすり合わせておく実務上の配慮が変わることはある。そこだけ、具体的に押さえます。
ビルクリーニングで働く外国人の主な出身国は、ベトナム、フィリピン、ミャンマーです。
ビルクリーニングは特別な前職経験を問わない作業が中心で、幅広い国籍の人材が参入しやすい分野です。国籍の情報は「人数の傾向」と「配慮すべき実務」を知るためのもので、採用の合否や向き不向きを決めるためのものではありません。ここを取り違えると、国籍を理由にした差別的な取り扱いになり、法令上のリスクを抱えます。
「清掃の仕事」と聞くと、地味で単調な作業をイメージする方も多いかもしれません。しかし、実際にビルクリーニングの現場で働く外国人からは、意外にもポジティブな声が多く聞かれます。
未経験からでもスタートできる。ビルクリーニングは、製造業のような機械操作の習熟や、建設業のような専門的な技能資格が入職時点で必要ありません。基本的な清掃手順と洗剤・機器の使い方を覚えれば、比較的短期間で一人前の仕事ができるようになります。「日本語がまだ十分でなくても、先輩の動きを見ながら覚えられた」というのは、多くの外国人スタッフから聞かれる声です。
「きれいになった」という成果が目に見える。清掃前と清掃後の違いは一目瞭然です。汚れた床がピカピカになる、くすんだガラスが透き通る——こうした「仕事の成果がすぐに見える」ことは、大きなやりがいにつながります。あるベトナム出身のスタッフは「お客さんが『きれいになったね』と声をかけてくれると、やっていてよかったと思う」と話しています。
全国どこでも働ける。ビルクリーニングの需要は、東京・大阪などの大都市だけでなく、地方都市にもあります。オフィスビル、病院、学校、商業施設は全国に存在するため、特定の地域に限定されない就労機会があります。地方で働きたい外国人にとっても、都市部で経験を積みたい外国人にとっても、選択肢が広い分野です。
身体的な負担が比較的安定している。建設業のように高所作業や重量物の運搬が日常的に発生するわけではなく、農業のように炎天下での長時間作業が求められるわけでもありません。室内作業が中心で、作業環境が比較的安定しているのも、長く続けやすい仕事である理由の一つです。
ビルクリーニングの大きな特徴の一つが、作業時間帯です。オフィスビルでは、テナント企業の就業時間外に清掃を行うため、早朝(午前5時〜7時)や夜間(午後8時〜深夜)の勤務が一般的です。来日して間もない外国人にとって、この不規則な勤務時間は生活リズムの面で大きな負担になります。
対処法:入社後すぐに早朝・夜間シフトに入れるのではなく、まずは日中帯の現場で基本的な作業を習得し、段階的に早朝・夜間帯に移行するプログラムを組むことが効果的です。通勤手段の確保も外せない。早朝・深夜は電車もバスも動いていない。社用車での送迎か、現場近くへの住居手配を、採用前に決めておく。
ビルクリーニングでは、担当する建物によって清掃のルールや手順が異なります。オフィスビルと病院では求められる衛生レベルが違い、商業施設とホテルではお客様への対応方法が異なります。複数の建物を掛け持ちする場合には、それぞれのルールを覚える必要があります。
対処法:建物ごとの清掃マニュアルを写真入りで作成し、母国語の翻訳を併記する方法が有効です。特に病院など衛生管理が厳格な現場では、感染対策のルール(使い捨て手袋の交換タイミング、汚染区域と清潔区域の区分など)を写真と図で掲示し、入場前に毎回声に出して確認する。ここを口頭任せにすると事故が起きる。
清掃作業そのものは「見て覚える」部分も多いですが、ビルのテナントや利用者から声をかけられた際の対応、異常を発見したときの報告など、日本語でのコミュニケーションが必要な場面は少なくありません。
対処法:よく使うフレーズ(「清掃中です」「少々お待ちください」「管理者に確認します」など)をカード化して携帯させている会社があります。また、異常を発見した場合の報告手順(写真を撮って送信する、定型文を使って連絡するなど)をあらかじめ決めておくことで、日本語力が十分でなくても確実に情報伝達ができる体制を整えられます。
ビルクリーニングでは、用途に応じたさまざまな洗剤・薬剤を使用します。酸性洗剤とアルカリ性洗剤を誤って混ぜると有毒ガスが発生するなど、安全上のリスクがあるものも含まれます。
対処法:洗剤の種類ごとに色分けしたボトルを使用し、混ぜてはいけない組み合わせをイラストで掲示する方法が効果的です。安全データシート(SDS)の内容を母国語で要約した資料を配布し、入社時研修で取り扱いルールを一つずつ確認する。文字が読めなくても見て分かる。そこまで落とし込んで、初めて事故が防げる。
外国人スタッフの受入れは、一緒に働く日本人スタッフにもさまざまな変化をもたらします。
若い労働力の加入で現場が活気づく。ビルクリーニング業界は高齢の日本人スタッフが中心となっているケースが多く、20代〜30代の外国人材が加わることで、現場に若い活力が生まれます。「自分たちの仕事を若い人が覚えてくれるのが嬉しい」と語るベテランスタッフの声は、多くの現場で聞かれます。60代・70代のスタッフが中心だった現場では、重い清掃機器の移動や高所作業を外国人スタッフが担当するようになり、高齢スタッフの身体的負担が軽減されたという報告もあります。
作業手順の見直しにつながる。外国人に教えるためには、「なんとなくこうやっている」作業を言語化・標準化する必要があります。この過程で、非効率だった作業手順が見直され、清掃品質の均一化が進んだという事例があります。ある管理会社では、外国人向けに作成した動画マニュアルが日本人スタッフの教育にも活用されるようになり、新人育成の効率が大幅に向上しました。
一方で、コミュニケーションの負担は確実にある。特に受入れ初期は、日本人スタッフが作業方法を教えたり、現場でのトラブルに対応したりする場面が増えます。指導役のスタッフには業務負荷の調整や手当の支給など、会社としてのサポートが不可欠です。「外国人が来たから楽になる」とは考えない。最初の数か月は日本人スタッフにも負担が増える。それを織り込んで計画を立てる。
ビルクリーニング分野には、受入れにあたって押さえておくべき特有のルールがあります。
転籍制限期間:育成就労制度における転籍制限期間は、分野ごとに1年または2年が設定される見込みです。ビルクリーニング分野の転籍制限期間は1年(2026年1月23日閣議決定により確定)。
ビルクリーニング分野特定技能評価試験:特定技能1号への移行にはこの試験の合格が必要です。建築物内部の清掃に関する知識・技能を問う学科試験と実技試験で構成されます。実技試験では、床面の清掃(ダストクロス法・モップ法)、ガラスの清掃(スクイジー法)、トイレの清掃など、実際の清掃作業の技能が問われます
建築物衛生法(ビル管法)への理解:延床面積3,000平方メートル以上の特定建築物には、建築物環境衛生管理技術者(通称:ビル管理士)の選任が義務づけられています。外国人スタッフが直接この資格を取得する必要はありませんが、所属する企業がこの法律に基づいた衛生管理を行っていることを理解しておく必要があります
特定技能2号への道:ビルクリーニング分野は特定技能2号の対象です。2号に移行すると在留期間の上限がなくなり、家族の帯同も可能になります。ビルクリーニング技能検定1級への合格等が2号移行の要件として想定されます
労働安全衛生上の注意:高所でのガラス清掃や、化学薬品の取り扱いに伴うリスクがあるため、雇入れ時の安全衛生教育の実施が義務付けられています。特に、脚立やゴンドラを使用する作業がある場合は、特別教育の受講が必要になることがあります
夜間・早朝勤務に伴う労務管理:深夜時間帯(午後10時〜午前5時)の勤務には深夜割増賃金(25%以上)の支払いが必要です。労働基準法に基づいた適正な労働時間管理と割増賃金の支払いが求められます
ビルクリーニング分野で外国人材の受入れを検討する場合、以下のステップで進めるのが一般的です。
自社の業務が対象に含まれるか確認する:ビルクリーニング分野の対象は「建築物内部の清掃」です。屋外清掃のみの業務や、ハウスクリーニング(個人宅の清掃)は対象外となる場合があるため、自社の業務内容が制度の対象に該当するかを確認してください
監理団体(育成就労施行後は「監理支援機関」に移行)に相談する:育成就労制度では、監理支援機関を通じた受入れが基本です。ビルクリーニング分野の受入れ実績がある機関を選ぶことが重要です。全国ビルメンテナンス協会に問い合わせることで、業界に精通した機関を紹介してもらえる場合もあります
受入れ体制を整備する:指導担当者の選定、住居の手配、勤務シフトの設計(早朝・夜間帯の対応)、安全衛生教育の準備など、受入れ前に整えるべき項目を計画的に進めます
日本人スタッフへの事前説明:外国人と一緒に働くことについて、既存の日本人スタッフに説明し、理解を得ておく。特に高齢のベテランが多い現場では、不安を口にする人もいる。一方通行の通達で終わらせず、質問を受ける場を設ける
入国後のサポート計画の策定:来日後の日本語教育、清掃技能のOJT計画、生活支援(通勤手段、買い物、通院等)のサポート体制を事前に策定しておくことで、早期離職を防ぎ、定着率を高めることができます
ビルクリーニングは建物の価値を守る仕事だ。目立たないが、止まれば建物はすぐ荒れる。その担い手を確保できるかどうかに、これからの業界の存続がかかっている。未経験から始められ、全国どこでも需要がある。来てくれた人が安全に長く働ける現場をつくれば、人は残り、現場は回り続ける。ビルクリーニングは、初めて外国人材を受け入れる企業でも入りやすい分野だ。
> ご注意: 本記事の内容は2026年2月時点の公開情報に基づいています。最新の情報は出入国在留管理庁および厚生労働省の公式発表をご確認ください。
※在留者数データの出典は出入国在留管理庁(令和7年12月末/2025年12月末時点の公表資料)です。育成就労法は2027年4月1日に施行されます。分野ごとの具体的な運用方針等については、今後の政省令の整備により詳細が定まる場合があります。
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