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林業は、日本の国土の約67%を占める森林を管理し、木材を生産する産業です。植付け・下刈り・間伐といった「育林」と、伐木・集材・運材といった「素材生産」が主な業務であり、森林の維持管理から木材の供給まで、日本の環境と経済の両面を支える重要な役割を担っています。
しかし、林業の担い手不足は深刻です。林業従事者は1980年の約14.6万人から2020年には約4.4万人にまで減少し、その約4分の1が65歳以上という高齢化も進んでいます。作業現場が中山間地域に集中していることから、そもそも働き手の確保が難しい地域的なハンデもあります。国内の若年層にとって「山で働く仕事」のイメージが薄く、新規参入者の確保が長年の課題となってきました。
こうした背景のなか、林業分野では旧技能実習制度のもとで外国人材の受入れが行われてきました。さらに2024年からは特定技能制度の対象にも追加され、受入れの選択肢が広がっています。2027年4月に施行される育成就労制度においても、林業は全17分野のひとつとして含まれており、5年間の受入れ見込み人数は500人と設定されています。日本の森林を次の世代に引き継ぐために、外国人材の力を借りることは現実的かつ必要な選択肢になりつつあります。
林業分野における外国人材の受入れ状況を整理します。
技能実習「林業」の在留者数:約1,200人(2024年時点推定)
特定技能1号「林業」の在留者数:0人(出入国在留管理庁、令和7年12月末時点・速報値)
主な送出国と傾向:技能実習の実績をベースにすると、ベトナムとインドネシアが中心です。両国とも森林資源が豊富で、林業に関する基礎的な知識や経験を持つ人材が多いことが背景にあります。
林業分野は他の分野(製造業や建設業など)と比べると受入れ規模は小さいですが、中山間地域の過疎化が進むなかで外国人材の存在感は着実に高まっています。
育成就労の受入れ見込み人数:500人(5年間の上限)
特定技能1号の5年間受入れ見込み人数:900人
政府が想定するタイムライン:
林業は季節によって作業内容が大きく変わるため(冬季は伐採、春〜秋は造林作業が中心)、人材を計画的に確保できるかどうかが、現場を回す鍵になります。育成就労制度を使い、通年で安定して人を確保できる体制を、早めに整えておく。
林業分野で利用可能な外国人受入れ制度は以下のとおりです。
| 制度 | 対応 | 備考 |
|---|---|---|
| 技能実習 | ○ | 林業職種として受入れ実績あり。育成就労への移行に伴い新規受入れは順次終了 |
| 育成就労 | ○ | 2027年4月〜。最長3年、特定技能1号への移行を前提。見込み人数500人 |
| 特定技能1号 | ○ | 2024年から受入れ開始の新分野。林業技能測定試験+日本語試験で取得可能 |
| 特定技能2号 | × | 林業分野は対象外。 1号のみの設定 |
注目ポイント:林業分野では特定技能2号が設けられていません。特定技能1号の在留期間は通算5年が上限であるため、育成就労の3年と合わせて最長8年の就労が基本的な想定です。8年を超えて日本で就労を続けたい場合は、他の在留資格への切替えが必要になります。林業は高度な技術の習得に時間がかかる仕事であるため、今後の制度見直しで2号の追加が議論される可能性はありますが、現時点では未定です。
先に、はっきりさせておきます。これは「どの国の人が林業に向いているか」という話ではありません。国籍で向き不向きを決めるのは、採用の判断基準として不適切ですし、法令上も問題になりえます。配置も育成も、国籍ではなく本人の経験・体力・安全意識・日本語の習熟度・希望で決めてください。そのうえで、国によって事前にすり合わせておく実務上の配慮が変わることはある。そこだけ、具体的に押さえます。
林業分野で働く外国人は、技能実習の実績をベースにするとベトナムとインドネシアが中心です。
日本の林業技術を母国の森林管理に活かしたいという意欲を持つ人材は東南アジア各国にいます。国籍の情報は「人数の傾向」と「配慮すべき実務」を知るためのもので、採用の合否や向き不向きを決めるためのものではありません。ここを取り違えると、国籍を理由にした差別的な取り扱いになり、法令上のリスクを抱えます。
「林業=きつい・危ない・田舎」というイメージを持たれがちですが、現場で働く外国人からは意外にもポジティブな声が多く聞かれます。
自然のなかで働く充実感。オフィスや工場の閉鎖空間ではなく、森のなかで四季の変化を感じながら働ける環境は、他の分野にはない大きな魅力です。ある林業事業体で働くベトナム人技能実習生は「朝、山に入ると空気がまったく違う。この仕事が好きだ」と話しています。自然のなかで身体を動かす仕事に喜びを感じる人材にとって、林業は天職になり得ます。
目に見える成果がある仕事。自分が植えた苗木が成長し、間伐した森に光が差し込むようになる。自分が伐採した木が製材されて建材や家具になる。林業は「自分の仕事の成果」が目に見える形で残る仕事です。特に造林作業は、何十年後かの未来の森をつくる仕事であり、スケールの大きさにやりがいを感じるという声もあります。
専門的な技術が身につく。チェーンソーの操作、重機(フォワーダ、プロセッサなど)の運転、樹木の倒伏方向の見極めなど、高度な専門技術を習得できます。日本の林業技術は安全管理や作業効率の面で世界的にも高い水準にあり、母国に帰った後も、この経験を活かせる場面は多い。
住居費が安い地域が多い。中山間地域は都市部と比べて家賃が大幅に安く、なかには事業者が住居を無償で提供しているケースもあります。生活コストが低いぶん、手取り収入からの貯金や母国への仕送りがしやすいという経済的なメリットがあります。
林業は日本の全産業のなかでも労働災害発生率が非常に高い分野です。チェーンソーによる切創、伐倒木の下敷き、斜面からの滑落、蜂刺されなど、命に関わる危険が常に存在します。外国人スタッフにとっても、安全管理の理解は最優先事項です。
対処法:チェーンソーや刈払機の操作には労働安全衛生法に基づく特別教育の受講が義務付けられています。この教育は日本語で実施されるため、母国語による補助教材(テキストや動画)を準備することが効果的です。また、「かかり木処理の禁止事項」「伐倒方向の確認手順」など、特に重大事故につながりやすい場面のルールは、繰り返し確認する体制を整えましょう。
林業の現場は山間部にあるため、最寄りのスーパーまで車で30分以上かかるような環境も珍しくありません。公共交通機関がほとんどない地域もあり、外出手段の確保が大きな課題です。
対処法:自動車運転免許の取得を支援する事業者が増えています。免許取得には費用と時間がかかりますが、中山間地域で生活するうえでは事実上の必須条件です。また、地域のJAや直売所での買い物、オンライン通販の活用方法を入国後早期に教えることで、日常生活の不便さを軽減できます。孤立防止のためには、地域の国際交流イベントへの参加や、同じ地域で働く外国人同士のつながりを支援することも有効です。
林業は季節によって作業が大きく変わります。冬季は主に伐採作業、春から秋にかけては植付け・下刈り・間伐が中心です。豪雪地域では冬季に作業ができず、その期間の処遇が問題になることがあります。
対処法:冬季に作業ができない地域では、屋内での研修(安全教育、日本語教育、資格取得の勉強など)や、他の関連作業(木材加工、林道整備など)を組み合わせ、年間を通じた雇用を維持している事業者があります。育成就労制度では通年雇用が原則。だから季節変動への対応策は、受入れ前に決めておく。
山の中では携帯電話の電波が届かないことがあり、無線機や声掛けでのコミュニケーションが中心になります。緊急時に正確な意思疎通ができるかどうかは、安全に直結する問題です。
対処法:作業チームに入る前に、現場でよく使う指示語や合図を徹底的に覚えてもらう。ここを省くと、いざという時に声が通らない。「逃げろ!」「止めろ!」「上を見ろ!」といった緊急時の掛け声は、理解度を確認するまで何度も繰り返し練習します。笛や手信号など、言語に依存しない合図も併用することで、安全性を高めることができます。
外国人スタッフの受入れは、林業の現場で働く日本人スタッフにもさまざまな影響をもたらします。
人手不足の直接的な緩和。林業の現場は少人数の班で構成されていることが多く、一人が欠けると作業計画全体に影響が出ます。外国人スタッフが加わることで班の人数に余裕が生まれ、一人あたりの作業負担が軽減されます。「休みが取りやすくなった」という声は、現場の日本人スタッフから最も多く聞かれる感想のひとつです。
若い活力が職場に加わる。林業従事者の高齢化が進むなか、20代〜30代の外国人スタッフが加わることで職場に活気が生まれます。体力仕事において若い労働力は貴重であり、ベテランの日本人スタッフが持つ技術と若い外国人スタッフの体力が組み合わさることで、作業効率が向上した事例も報告されています。
技術継承のきっかけになる。外国人に技術を教える過程で、ベテランの日本人スタッフが自身の技術を言語化する機会が生まれます。「見て覚えろ」式の教育では外国人には伝わらないため、手順を分解して説明する必要があり、その過程で作業マニュアルが整備されていきます。これは将来の日本人の若手育成にも活用できる財産です。
一方で、指導の負担は大きい。林業は危険を伴う仕事であるため、外国人スタッフの指導には通常以上の注意と時間が必要です。言葉の壁がある状態で安全を確保しながら指導する負担は軽くありません。指導役のスタッフへの手当の支給や、作業量の調整など、事業者側の配慮が不可欠です。
林業分野には、危険作業を伴う業種ならではの独自のルールや要件があります。
特別教育の受講義務:チェーンソーを用いた伐木作業、刈払機の操作、小型車両系建設機械の運転など、林業で必要な作業の多くに労働安全衛生法に基づく特別教育の受講が義務付けられています。外国人スタッフも例外ではなく、所定の教育を受けなければ作業に従事できません。教育は日本語で実施されるため、理解を補助するための母国語教材の準備が重要です。
転籍制限期間:育成就労制度のもとでの林業分野の転籍制限期間は、1年(2026年1月23日閣議決定により確定)。
林業技能測定試験:特定技能1号への移行には、林業分野の技能測定試験への合格が必要です。育林と素材生産に関する知識・技能が問われます。試験の実施体制は整備途上であり、海外での実施スケジュールなどは今後明らかになる見通しです。
特定技能2号は対象外:林業分野では特定技能2号が設けられていません。特定技能1号の在留期間は通算5年が上限であり、育成就労の3年と合わせて最長8年が基本的な就労期間の想定です。
危険作業に関する制限:労働安全衛生法では、経験年数に応じた作業の制限があります。たとえば、かかり木の処理など特に危険性の高い作業は、十分な経験を積んだ者のみが行うべきとされています。外国人スタッフについても、段階的に作業範囲を広げていく計画的な育成が必要です。
住居の確保が受入れの前提:中山間地域では賃貸物件の選択肢が極めて限られるため、事業者が住居を用意することが事実上の前提となります。住居の広さ、設備、プライバシーの確保など、適切な住環境を整えることが受入れの必須条件です。
冬季の雇用維持:豪雪地域など冬季に屋外作業が困難な地域では、通年雇用をどう維持するかが課題です。育成就労制度では通年での雇用が原則となるため、冬季の作業計画や研修計画を事前に策定しておく必要があります。
職安法による有料職業紹介の禁止:林業は職業安定法の規定により有料職業紹介が禁止されている業種です。外国人材の採用に職業紹介を利用する際は、無料職業紹介事業者を通じる必要があります。利用する紹介機関が無料職業紹介の許可を持っているか事前に確認してください。
林業分野で外国人材の受入れを検討する場合、以下のステップで進めるのが一般的です。
自社の受入れニーズの整理:育林と素材生産のどちらの業務を中心に外国人材を配置するか、必要な人数、受入れ時期を明確にします。季節変動が大きい林業では、年間の作業計画と連動した人材計画が欠かせません。
監理支援機関(育成就労の場合)または登録支援機関(特定技能の場合)の選定:林業分野の受入れ経験がある機関を選ぶことが重要です。地域の森林組合が監理支援を兼ねているケースもあるため、まずは所属する森林組合や林業協会に相談してみるとよいでしょう。
住居と生活基盤の整備:中山間地域での受入れでは、住居の確保が最初にして最大の実務課題です。住居の手配に加え、日常の買い物手段、通院手段、コミュニティとの接点など、生活全般の支援体制を計画します。
安全教育体制の準備:チェーンソーや刈払機の特別教育、伐倒作業の安全手順、蜂やヒグマ・ツキノワグマ対策など、林業特有の安全教育を多言語で実施できる体制を整えます。母国語の補助教材や、動画を活用した教材の準備が効果的です。
日本人スタッフへの事前説明:少人数の班で行動する林業では、日本人スタッフと外国人スタッフの信頼関係が安全に直結します。受入れの目的や安全教育の計画を丁寧に共有し、チームとして受け入れる体制をつくりましょう。
冬季の雇用計画:冬季に屋外作業ができない地域では、研修や関連作業(木材加工、機械整備、日本語学習など)で雇用を維持する計画を事前に立てておきます。
林業の現場は「山」だ。だからこそ、受入れには安全と生活の両面で、ふだん以上の準備がいる。逆に言えば、そこを整えれば外国人材は長く続く戦力になる。人手不足で山仕事が止まれば、森も、地域も荒れる。まずは地域の森林組合や林業関係団体に相談するところから始めてほしい。
> ご注意: 本記事の内容は2026年2月時点の公開情報に基づいています。最新の情報は出入国在留管理庁および厚生労働省の公式発表をご確認ください。
この分野で利用可能な在留資格のステップです