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この分野について
農業は、育成就労制度・特定技能制度の両方で受入れが認められている分野の1つです。高齢化と担い手不足が深刻な日本農業にとって、外国人労働者はすでに欠かせない戦力となっています。
農業分野は大きく**「耕種農業」と「畜産農業」**の2区分に分かれます。耕種農業は稲作、野菜栽培、果樹栽培、施設園芸などを含み、畜産農業は養豚、養鶏、酪農、肉用牛の飼養管理などが対象です。業務内容としては、耕種であれば種まき・苗植え・収穫・選別・出荷調整、畜産であれば飼料の給餌・畜舎の清掃・搾乳・出荷管理など多岐にわたります。
農業分野の大きな特徴は季節性の高さです。繁忙期と閑散期の差が非常に大きく、収穫シーズンには猫の手も借りたいほどの人手が必要になる一方で、冬場はほとんど作業がない地域もあります。この季節変動に対応するため、農業分野は漁業とともに「派遣形態」が認められている唯一の分野です。つまり、JAや派遣事業者を通じて複数の農家に外国人労働者を派遣する形態が制度上認められており、通年雇用が難しい個人農家にとっても外国人の受入れが現実的な選択肢になっています。
現状データ
農業分野における外国人労働者の受入れ状況は以下のとおりです。
- 技能実習「農業」の在留者数:約30,000人(推定)。技能実習生の総数は全分野合計で45万6,618人(出入国在留管理庁、令和7年末時点)
- 特定技能1号「農業」の在留者数:37,952人(出入国在留管理庁、令和7年12月末速報値)。特定技能在留者の総数は全分野合計で390,296人(令和7年12月末速報値・過去最多)
- 合計:推定で数万人規模の外国人が農業分野で就労中
技能実習と特定技能を合わせると、農業分野全体で6万人を超える外国人が日本の農業現場を支えています。これは全国の基幹的農業従事者(111万4千人、2024年農業構造動態調査・推定値、農林水産省2024年12月27日公表)のおよそ5〜6%に相当し、産地によっては外国人がいなければ収穫が成り立たないという地域も珍しくありません。
特に北海道、茨城県、千葉県、長野県、熊本県などは受入れ人数が多い地域として知られており、レタスやキャベツなどの大規模露地野菜、いちご・トマトなどの施設園芸、酪農地帯での受入れが目立ちます。
今後の受入れ見込み
政府が設定した今後5年間の受入れ見込み人数は以下のとおりです。
- 育成就労の受入れ見込み人数:26,300人(2027年4月〜2028年度末・約2年間の上限)
- 特定技能1号の受入れ見込み人数:73,300人(2024年度〜2028年度末・5年間の上限)
育成就労と特定技能1号を合わせた分野全体の受入れ見込み数は99,600人です。育成就労は2027年4月の制度施行に合わせて受入れが始まり、現在の技能実習生は経過措置期間を経て順次、育成就労制度に移行していきます。なお、育成就労は最長3年、特定技能1号は5年間と対象期間が異なるため、単純な数字の比較には注意が必要です。
出典:2026年1月23日閣議決定「特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針」
この規模の受入れ枠が設けられていることは、日本農業の人手不足がそれだけ深刻であることの裏返しです。逆に言えば、これから外国人の受入れを始めようとする農業経営者にとっては、制度面での枠は十分に確保されているということです。
制度対応表
| 制度 | 対応 | 備考 |
|---|---|---|
| 技能実習 | ○ | 耕種農業・畜産農業の2区分。2027年4月以降は新規受入れ停止(経過措置あり) |
| 育成就労 | ○ | 2027年4月施行。技能実習に代わる新制度。最長3年 |
| 特定技能1号 | ○ | 農業技能測定試験+日本語試験に合格、または技能実習2号を良好に修了(試験免除ルート)。在留期間上限5年 |
| 特定技能2号 | ○ | 熟練技能者として在留期間の上限なし。家族帯同も可能 |
農業分野は技能実習から特定技能2号まで、すべての制度に対応しています。つまり、育成就労(3年)→ 特定技能1号(5年)→ 特定技能2号(上限なし)と、最大で無期限に日本で農業に従事し続けるキャリアパスが制度上用意されています。長期的な人材育成を見据えた受入れが可能な分野です。
この分野で働く外国人の国籍傾向
先に、はっきりさせておきます。これは「どの国の人が農業に向いているか」という話ではありません。国籍で向き不向きを決めるのは、採用の判断基準として不適切ですし、法令上も問題になりえます。配置も育成も、国籍ではなく本人の経験・体力・日本語の習熟度・希望で決めてください。そのうえで、国によって事前にすり合わせておく実務上の配慮が変わることはある。そこだけ、具体的に押さえます。
農業で働く外国人の出身国は、以下の国が中心です。
- ベトナム:最も人数が多く、農業分野全体の約4〜5割を占めます。母国でも農業に従事していた経験者が一定数います。
- インドネシア:近年急増している送出国の一つで、畜産分野でも受入れが目立ちます。イスラム教徒が多いため、礼拝の時間や食事(ハラール対応)への配慮が必要になることがあります。
- カンボジア:農業経験者が比較的多く、露地作業での受入れ実績があります。
- ミャンマー:近年、日本での就労を希望する人が増えている送出国です。
- タイ:歴史的に農業分野の技能実習の送出実績が長く、とくに畜産(養鶏・養豚)の経験者が多いのが特徴です。
ここで挙げた人数の傾向は「どの国が優秀か」ではなく、送出体制や送出実績の積み上がりといった構造の話として読んでください。宗教・食習慣への配慮(礼拝時間・ハラール等)は出身国でひとくくりにはできず、配慮の度合いは人によって違うので、採用前に本人と詰めておきます。語学も「どの国の出身か」ではなく、本人がどこまで日本語を使えるかを個別に確認し、伸ばす前提で受け入れます。
定着の面では、現場で力を発揮して経営を支える存在になった例が各地にあります。ある北海道の大規模畑作農家では、「ベトナム人スタッフ5人がもう3年目。最初は言葉が通じなくて大変だったけど、今では収穫のスピードも品質管理も日本人スタッフと変わらない。彼らが来る前はパートさんを集めるだけで一苦労だったが、安定して人が確保できるようになって経営計画が立てやすくなった」という声があります。ただしこれは個々の積み重ねの結果であって、国籍を採用の合否や向き不向きの基準にしてよいという話ではありません。国籍を理由にした差別的な取り扱いは、法令上のリスクを抱えます。
意外と知られていないこの仕事の魅力
農業分野で働く外国人にとって、この仕事には意外と知られていない魅力があります。
「自分で作ったものが形になる」達成感。工場のラインで部品を組み立てる仕事とは異なり、種をまき、育て、収穫するまでの一連の流れを体験できます。あるインドネシア出身の特定技能外国人は、「自分が植えたトマトがスーパーに並んでいるのを見たとき、本当にうれしかった」と語っています。
住居付きの求人が多い。農業分野は地方・僻地での受入れが多いため、受入れ企業が社宅やアパートを用意するのが一般的です。都市部で家賃に苦しむ他分野の外国人と比べると、生活コストを抑えやすいという実利的なメリットがあります。
日本の食文化を肌で学べる。日本の農業現場で働くことで、和食の素材がどう作られているかを体で覚えることができます。帰国後に母国で日本式の農業技術を活かして起業するケースも出てきており、「日本で農業を学んだ」という経験がキャリアの武器になっています。
自然の中で働ける。屋外作業が中心のため、工場内での単調な作業に比べて精神的な開放感があるという声は多く聞かれます。四季の変化を感じながら働くことに喜びを見出す外国人は少なくありません。
現場でよくある課題と対処法
1. 言語コミュニケーション
農作業は「見て覚える」部分も多いですが、農薬の使用方法や機械の安全操作など、正確な指示が必要な場面もあります。
対処法:作業手順書を写真付きで作成し、母国語の翻訳を併記する方法が効果的です。最近はスマートフォンの翻訳アプリも実用レベルになっており、現場で即座に意思疎通できる環境が整いつつあります。よく使う農作業用語(「水やり」「収穫」「選別」など)を母国語と日本語で一覧にした「農業用語カード」を作っている農家もあります。
2. 季節性への対応
繁忙期は早朝から夕方まで長時間労働になりがちで、閑散期は逆に仕事が少なくなります。
対処法:36協定の締結は必須です。農業には労働基準法の労働時間・休日規定の一部が適用除外となる特例がありますが、育成就労・特定技能の外国人を受入れる場合は適切な労働時間管理が求められます。閑散期には関連する作業(加工、出荷、施設メンテナンスなど)を割り当てたり、複数の農家間で派遣形態を活用して通年雇用を実現する工夫が有効です。
3. 住居確保と生活環境
農業が盛んな地域は交通の便が悪いことが多く、外国人の日常生活(買い物、通院、送金など)に不便が生じがちです。
対処法:車での送迎体制の整備、Wi-Fi環境の提供(母国の家族との連絡手段として非常に重要)、近隣の国際交流協会や日本語教室との連携が効果的です。ある長野県の農業法人では、週1回の「街への買い出しデー」を設けて、まとめ買いの機会を提供しています。
4. 天候・暑さ・寒さへの対応
夏場の炎天下での作業や、北海道・東北での冬場の寒さは、東南アジア出身者にとって大きな負担になります。
対処法:こまめな休憩と水分補給の徹底、熱中症対策グッズの支給、防寒具の貸与など、季節ごとの体調管理を仕組みとして組み込むことが重要です。
一緒に働く日本人スタッフへの影響
外国人スタッフの受入れは、既存の日本人従業員にも大きな変化をもたらします。
作業の標準化が進む。外国人に教えるために作業手順を見える化すると、結果として日本人スタッフの間でも「なんとなくやっていた作業」が明確になり、品質のばらつきが減ったという報告があります。ある熊本県のいちご農家では、「外国人向けにマニュアルを作ったら、パートのおばちゃんたちにも好評だった。今まで口伝えでやってたことが整理された」とのことです。
職場に活気が出る。若い外国人スタッフが入ることで、高齢化が進んでいた職場に活気が戻ったという声は多く聞かれます。「重い荷物を率先して運んでくれる」「日本語を一生懸命覚えようとしている姿に刺激を受けた」など、ポジティブな変化を感じている農家は少なくありません。
異文化理解の機会。地方の農村部では外国人と接する機会が限られていることも多く、最初は戸惑いもあります。しかし、一緒に働く中で自然と相互理解が進み、地域の祭りに外国人スタッフが参加するなど、地域社会の国際化にもつながっている事例があります。
この分野特有のルールと注意点
- 転籍制限期間:1年(2026年1月23日閣議決定)。農業分野は、季節性が高く比較的短期間で基本的な技能を習得できるという分野の特性が考慮され、転籍制限期間が1年に設定されています。なお、賃金未払い・ハラスメント等のやむを得ない事情がある場合は、制限期間に関わらず即時転籍が認められます。
- 試験の概要:特定技能1号への移行には農業技能測定試験の合格が必要です。耕種農業と畜産農業の2区分に分かれており、それぞれの分野に応じた試験を受験します。育成就労から特定技能1号への移行時に受験することになります。
- 派遣形態の活用:前述のとおり、農業分野では派遣形態での受入れが認められています。ただし、派遣元・派遣先の双方に受入れ要件を満たす義務があり、安易な「使い回し」にならないよう、適切な育成計画の策定が求められます。
- 労働時間の特例:農業は労働基準法第41条により、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用除外とされています。ただし、育成就労外国人・特定技能外国人の受入れにあたっては、適正な労働条件の確保が許可・認定の要件となっており、実質的に36協定に相当する労働時間管理が求められます。農繁期であっても無制限に働かせることはできません。
- 住居の確保義務:地方での受入れが多い農業分野では、受入れ企業が外国人の住居を確保することが実務上ほぼ必須です。家賃を給与から控除する場合は、適正な金額(実費を大幅に超えない範囲)であることが求められます。
受入れを始めるには
農業分野で外国人の受入れを検討している方は、以下のステップで進めるのが一般的です。
- 自社の需要を整理する:どの時期に、どの作業で、何人の人手が必要かを明確にします。通年雇用が可能か、繁忙期のみの受入れか(派遣形態の活用)によって、選ぶべきスキームが変わります。
- 監理団体(育成就労施行後は「監理支援機関」に移行)に相談する:2027年4月の育成就労制度施行までは現行の「監理団体」が窓口になり、施行後は「監理支援機関」へ移行します。農業分野に実績のある機関を選ぶことが重要です。
- 受入れ計画を策定する:育成就労計画の認定を受けるために、育成内容・労働条件・住居・生活支援体制などを具体的に計画します。
- 職場環境を整備する:住居の確保、作業マニュアルの多言語化、日本人スタッフへの事前説明、安全衛生対策など、受入れ前の準備を進めます。
- 送出機関を通じてマッチング:送出国の送出機関を通じて候補者の選考・面接を行います。主な送出国はベトナム、インドネシア、カンボジア、ミャンマー、タイなどです。
初めての受入れで不安があるなら、まずはJAや地域の農業委員会に相談してみてください。同じ地域で先に外国人を受け入れている農家を紹介してもらい、現場の話を直接聞くのが、どんな資料より役に立ちます。そのうえで一つだけ——制度選びは入口にすぎません。繁忙期と閑散期で仕事の波が大きい農業では、年間を通した仕事の組み立てと、住まい・移動・日本語の支え、そして「来年もここで働きたい」と思える関係があるかどうかで、人が残るかが決まります。数々の現場を見てきた私たちが、いちばん確かだと言い切れるのは、そこです。
※本記事は2026年2月時点の公開情報に基づいて作成しています。在留者数データの出典は出入国在留管理庁(令和7年12月末/2025年12月末時点の公表資料)です。育成就労法は2027年4月1日に施行されます。受入れ見込み人数等の数値は閣議決定に基づくものであり、分野ごとの具体的な運用方針等については、今後の政省令の整備により詳細が定まる場合があります。最新の情報は、出入国在留管理庁および農林水産省の公式発表をご確認ください。
この分野のキャリアパス
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