🎣漁業分野

漁師の後継者問題と外国人採用——海業を支える人材確保の現実と制度の全貌

漁業・養殖業で外国人材の受入れが進んでいます。

育成就労特定技能1号特定技能2号公開 2026年6月
約3,700
特定技能 在留外国人数
出入国在留管理庁 令和6年12月末 🟡推定値
14,800
受入見込数・特定技能(5年間)
2025年閣議決定 2026〜2030年度
2,600
受入見込数・育成就労(5年間)
2025年閣議決定 2026〜2030年度
INDUSTRY INDEX漁業分野の採用特性インデックス
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採用難易度3/5
採用コスト2/5

低コストで始めやすい分野です

採用スピード2/5

時間がかかる傾向があります

定着率2/5

定着支援が重要な分野です

※ グロジョブ編集部が業界平均を基に作成した参考指標です。個社の状況により異なります。

目次

この分野について

漁業分野は、漁船漁業(かつお一本釣り、延縄、刺し網、まき網等)と養殖業(ほたて、かき、まぐろ、ぶり等)の2つの業務区分からなる産業です。日本の漁業就業者数は長期的な減少傾向にあり、高齢化も深刻です。農林水産省の統計によれば、漁業就業者の約4割が65歳以上という状況で、若い担い手の確保は業界全体の最重要課題になっています。

漁業は農業と並んで、外国人材の受入れに「派遣形態」が認められている数少ない分野です。これは漁業の業務が季節や漁期によって大きく変動するという特殊性を踏まえた制度設計です。たとえば、ほたて養殖は出荷期に人手が集中し、漁船漁業もかつお漁やさんま漁など魚種ごとに漁期が異なります。こうした季節性に柔軟に対応するために、一つの受入れ機関に固定されず、派遣元を通じて複数の漁業者のもとで就労できる仕組みが用意されています。

漁業分野では古くから技能実習制度を通じた外国人材の受入れが行われてきました。特定技能1号も2019年の制度開始時から対象分野に含まれており、2027年4月施行の育成就労制度でも対象分野となる見込みです。遠洋漁業から沿岸漁業、養殖業まで、幅広い業態で外国人材が活躍しています。

現状データ

漁業・養殖業 主要作業カレンダー(繁忙期 = 外国人材需要ピーク)1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月サケ・マス養殖繁忙ブリ養殖繁忙タイ養殖繁忙カキ・貝類繁忙定置網漁繁忙冬季(需要高)春〜夏(産卵期・育成期)秋冬(出荷最盛期)※主要養殖品目の一般的な作業カレンダー。地域・魚種により異なります。

漁業分野における外国人材の受入れ状況を整理します。

  • 技能実習「漁業」の在留者数:約8,000〜9,000人(2024年時点推定)

    • 漁船漁業と養殖業を合わせた数値です。地方の漁港や養殖場を中心に、長年にわたって技能実習生が重要な戦力として定着しています。
  • 特定技能1号「漁業」の在留者数4,590人(出入国在留管理庁、令和7年12月末時点・速報値)

    • 特定技能全体(390,296人)のなかでは規模は小さいですが、漁業の就業者数そのものが他の産業と比べて少ないことを考慮すると、業界に与えるインパクトは決して小さくありません。
  • 主な送出国と傾向インドネシア、フィリピン、ベトナムが上位を占めています。特にインドネシアは島嶼国で漁業が盛んであり、漁業経験を持つ人材が豊富です。フィリピンも同様に海洋国家として漁業従事者が多く、日本の漁業現場への適応が比較的スムーズです。

今後の受入れ見込み

  • 育成就労の受入れ見込み人数2,600人(2027年4月〜2028年度末・約2年間の上限)

    • 出典:2026年1月23日閣議決定「特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針」
  • 特定技能1号の受入れ見込み人数14,800人(5年間の上限)

    • 2019年当初の見込み(9,000人)から上方修正されており、漁業分野における外国人材への需要が急速に高まっていることがわかります。
  • 政府が想定するタイムライン

    • 2027年4月:育成就労制度の施行。新規入国者は育成就労の在留資格で受入れ開始
    • 2027年〜2030年:育成就労で入国した外国人が3年間の育成期間を経て特定技能1号へ移行
    • 並行して、既存の技能実習生からの特定技能への移行も継続

制度対応表

漁業分野で利用可能な外国人受入れ制度は以下のとおりです。

制度対応備考
技能実習漁船漁業・養殖業の2職種。育成就労への移行に伴い新規受入れは順次終了
育成就労2027年4月〜。最長3年、特定技能1号への移行を前提。派遣形態での受入れ可
特定技能1号漁業技能測定試験+日本語試験で取得可能。派遣形態での受入れ可
特定技能2号2023年に対象分野に追加。漁業に関する熟練した技能が要件

注目ポイント:漁業分野の最大の特徴は派遣形態での受入れが認められていることです。これは全分野のなかで農業と漁業の2分野のみに認められた特例です。漁業は季節や漁期によって繁忙期と閑散期の差が大きいため、直接雇用だけでは柔軟な人員配置が難しいという業界特有の事情があります。派遣形態であれば、漁協(漁業協同組合)等が派遣元となり、漁期に応じて複数の漁業者のもとで就労することが可能です。外国人材にとっても、閑散期に仕事がなくなるリスクが軽減され、安定した就労が見込めるメリットがあります。

この分野で働く外国人の国籍傾向

先に、はっきりさせておきます。これは「どの国の人が漁業に向いているか」という話ではありません。国籍で向き不向きを決めるのは、採用の判断基準として不適切ですし、法令上も問題になりえます。配置も育成も、国籍ではなく本人の経験・体力・日本語の習熟度・希望で決めてください。そのうえで、国によって事前にすり合わせておく実務上の配慮が変わることはある。そこだけ、具体的に押さえます。

漁業で働く外国人の出身国は、インドネシア、フィリピン、ベトナムが中心です。

  • 送り出しの実績(人数の傾向) — インドネシア・フィリピンはいずれも海に囲まれた島嶼国で、漁業の従事経験を持つ人材が送り出されてきた実績があります。ベトナムは沿岸部を中心に漁業が盛んで、日本への送出数も年々増えています。近年は中国からの技能実習生が減る一方、東南アジア諸国からの受入れが増加し、送出国は多様化しています。これは「どの国が優秀か」ではなく、送出体制や漁業の従事歴といった構造の話として読んでください。
  • 宗教・食習慣への配慮 — イスラム教を信仰する方(インドネシアなどに多い)を受け入れるなら、礼拝時間の確保や食事への配慮を、採用前に本人と詰めておきます。とくに長期の洋上操業では、限られた船内環境でどう配慮するかを事前に具体化しておくことが欠かせません。配慮の度合いは人によって違い、出身国でひとくくりにはできません。
  • 語学と業務のかけ合わせ — 漁業は安全に直結する指示・確認が多く、洋上では緊急時の意思疎通が命に関わります。求められるのは「どの国の出身か」ではなく、本人がどこまで日本語を使えるか。来日前の学習歴も人によって差があるので、個別に確認し、伸ばす前提で受け入れます。

国籍の情報は「人数の傾向」と「配慮すべき実務」を知るためのもので、採用の合否や向き不向きを決めるためのものではありません。ここを取り違えると、国籍を理由にした差別的な取り扱いになり、法令上のリスクを抱えます。

意外と知られていないこの仕事の魅力

「漁業は過酷」というイメージが強いですが、実際に日本の漁業現場で働く外国人からは、予想以上にポジティブな声が聞かれます。

母国よりはるかに安全な環境で漁業ができる。東南アジアの漁業は小型の木造船で安全装備も最低限という現場が少なくありません。一方、日本の漁船はGPS、魚群探知機、無線通信設備、救命設備などが整備されており、安全管理の水準は母国と比べて格段に高いと感じる外国人が多くいます。「日本の船は安全で、安心して仕事ができる」という声は多くの現場で聞かれます。

技術を学べる環境が充実している。日本の漁業技術は世界的に見ても高い水準にあり、延縄漁法や養殖技術など、母国に持ち帰れば大きな財産になるスキルを習得できます。「帰国後に自分の漁船を持って、日本で学んだ技術で漁業をしたい」という夢を持って働いている外国人も少なくありません。

食事が豊かで新鮮な魚が食べられる。漁船での食事は新鮮な魚を使った賄い料理が基本です。「毎日こんなに新鮮な刺身が食べられるとは思わなかった」と驚く外国人スタッフの話は、多くの漁業者が笑顔で語るエピソードです。

養殖業は自然のなかで働ける仕事。養殖場は海辺や入り江に位置することが多く、自然に囲まれた環境で働けることに魅力を感じる外国人も多くいます。工場のなかで一日中同じ作業をする製造業と比べて、「海を見ながら仕事ができるのが好き」という声は珍しくありません。

現場でよくある課題と対処法

洋上生活への適応(漁船漁業)

遠洋漁業では数週間から数か月にわたって洋上で生活することになります。狭い船内での共同生活、長期間にわたる家族との離別、船酔いなど、漁船漁業特有のストレスに適応できるかが大きな課題です。

対処法:採用時に漁船での生活について十分な説明を行い、本人の適性を慎重に見極めることが第一です。来日後はまず沿岸漁業の短期航海から経験を積ませ、徐々に長期航海に慣れてもらうステップを踏む漁業者もいます。また、近年は船上でもWi-Fiが使える環境を整備し、家族とのビデオ通話を可能にすることでホームシックの軽減に取り組む船も増えています。

安全管理と危険作業への対応

漁業は労働災害のリスクが他の分野と比べて高い産業です。漁船上での転落、漁具に巻き込まれる事故、荒天時の作業など、危険と隣り合わせの場面があります。言葉の壁がある外国人スタッフにとって、緊急時の指示を正確に理解できるかは命に関わる問題です。

対処法:安全教育は多言語で徹底し、緊急時の合図(笛、手信号、赤旗など)は言語に依存しない方法で統一します。救命胴衣の着用、荒天時の退避手順など、安全に関するルールは実地での繰り返し訓練が不可欠です。また、安全教育の内容を母国語で記載したマニュアルを用意し、入国後すぐに理解できるようにしている受入れ機関も多くあります。

労働基準法の一部特例への理解

漁船漁業には、労働基準法の一部規定(労働時間・休憩・休日に関する規定)が適用除外となる特例があります。これは自然条件に左右される漁業の特性によるものですが、外国人スタッフに対してはこの特例の意味と実際の労働条件を事前に明確に説明しておく必要があります。

対処法:労働条件通知書に労働時間・休日の考え方を具体的に記載し、母国語で説明を行います。「法律で守られていないのではないか」という不安を持たせないために、実際の休日日数や休息時間の目安、荒天時は出漁しないルールなどを具体的な数値とともに示すことが重要です。

地方・離島の生活環境

漁港は地方や離島に位置することが多く、都市部と比べて生活の利便性が大きく劣ります。買い物、医療機関、娯楽施設へのアクセスが限られ、同国人のコミュニティもほとんどない環境での生活は、外国人にとって大きなストレスになり得ます。

対処法:受入れ前に生活環境について写真や動画を使って具体的に説明し、本人の理解と同意を得ることが大切です。定期的な買い出しの送迎、Wi-Fi環境の整備、近隣の国際交流協会との連携など、孤立させない仕組みづくりが定着率を左右します。漁業者の家族ぐるみで外国人スタッフを受け入れ、休日に地域の行事に誘うなど、温かい人間関係を築いている漁村は定着率が高い傾向があります。

一緒に働く日本人スタッフへの影響

外国人スタッフの受入れは、漁業現場で働く日本人にもさまざまな影響をもたらします。

操業を維持できるようになる。最も直接的なメリットは、人手不足で操業そのものが困難になっていた漁船や養殖場が、外国人スタッフの加入によって操業を継続できるようになることです。「外国人が来てくれなかったら、船を出せなくなっていた」という切実な声は、地方の漁業者から多く聞かれます。日本人の若い漁師が減り続けるなか、外国人材は漁業の存続そのものを支える存在になっています。

世代間の橋渡し役になる。漁業の現場ではベテラン漁師(60〜70代)と若い外国人スタッフという組み合わせが多く見られます。高齢のベテラン漁師が外国人の若者に技術を教える過程で、後継者がいない寂しさが和らぎ、「教えるのが楽しい」「もう少し頑張ろうと思えた」という声が聞かれます。

職場の雰囲気が明るくなる。外国人スタッフが加わって船上生活や養殖場の空気が明るくなった、というケースは多く聞かれます。これは国籍によるものではなく、新しく入った人が現場になじもうと声をかけ、それに周りが応えるなかで生まれる変化です。「船の中が明るくなった」「休憩時間に一緒にカードゲームをしている」など、人間関係の面でもプラスの影響が報告されています。

一方で、安全意識の違いには注意が必要。母国では安全装備なしで漁業を行っていた人材にとって、日本の安全基準は過剰に感じることがあります。救命胴衣の常時着用や安全帯の使用を「面倒だ」と感じて省略しようとするケースもあるため、安全教育は根気強く繰り返す必要があります。

この分野特有のルールと注意点

漁業分野には、他の分野にはない独自のルールや特殊性があります。

  • 派遣形態での受入れが可能:前述のとおり、漁業(および農業)のみ、派遣形態での外国人材の受入れが認められています。漁協等の団体が派遣元(特定技能所属機関)となり、個々の漁業者に派遣するスキームです。季節性に対応できる柔軟な仕組みですが、派遣元が適切な労務管理を行い、派遣先の漁業者と連携して外国人スタッフの安全・生活を守る責任があります。

  • 転籍制限期間:育成就労制度のもとでの漁業分野の転籍制限期間は、1年(2026年1月23日閣議決定により確定)。漁業は季節性が高いため、派遣形態との組み合わせで柔軟な運用が検討される可能性があります。

  • 職業安定法(船員職業安定法)の規制:遠洋漁業については、船員職業安定法の規制により有料職業紹介が禁止されています。ただし、小型船舶を使用する漁業(沿岸漁業等)は船員職業安定法の適用外であり、有料職業紹介業者の利用が可能です。受入れ機関の選定にあたっては、自社の漁業形態がどちらに該当するかを事前に確認してください。

  • 漁業技能測定試験:特定技能1号への移行時に必要となる試験です。漁船漁業と養殖業の2区分があり、それぞれ学科試験と実技試験が課されます。漁船漁業では漁具の取り扱い・安全管理・漁法に関する知識が、養殖業では養殖生物の管理・餌料・疾病対策などの知識が問われます。

  • 労働基準法の一部適用除外:漁船漁業には、労働基準法第41条に基づき、労働時間・休憩・休日に関する規定の一部が適用除外となります。これは天候や潮流など自然条件に左右される漁業の特性によるものですが、外国人スタッフにも適切な休息が確保されるよう、受入れ機関は労働条件の明示と実態の管理を徹底する必要があります。

  • 漁船の安全管理:漁船に外国人スタッフを乗船させる場合、安全教育の実施、救命設備の整備、荒天時の操業判断など、安全管理体制の構築が特に重要です。入国管理局や水産庁の指針に基づいた安全対策を講じることが求められます。

  • 漁協との連携:多くの場合、漁協(漁業協同組合)が外国人材の受入れにおいて調整役を果たします。特に派遣形態での受入れでは、漁協が派遣元となるケースが一般的です。漁協の理解と協力を得ることが、円滑な受入れの前提条件です。

受入れを始めるには

漁業分野で外国人材の受入れを検討する場合、以下のステップで進めるのが一般的です。

  1. 受入れ形態の選定:直接雇用か派遣形態かを検討します。季節性の高い業務であれば、漁協等を通じた派遣形態が適している場合があります。また、育成就労・特定技能のどちらの制度を活用するかも併せて検討します。

  2. 漁協・地域の漁業者との連携:単独の漁業者で受入れ体制を整えるのは負担が大きいため、漁協や地域の漁業者同士で連携して受入れに取り組むケースが多くあります。すでに外国人材を受け入れている地域の事例を参考にしましょう。

  3. 監理支援機関(育成就労の場合)または登録支援機関(特定技能の場合)の選定:漁業分野の受入れ実績がある機関を選ぶことが重要です。漁業は他の分野と比べて特殊性が高いため、業界に精通した機関をパートナーに選ぶことが成功のカギです。

  4. 住居・生活環境の整備:漁港は地方に位置することが多いため、住居の確保は特に重要です。寮の整備やWi-Fi環境の確保、近隣の生活インフラ(スーパー、医療機関等)へのアクセス手段の確保など、生活面のサポート体制を事前に整えます。

  5. 安全教育プログラムの策定:漁業は危険を伴う作業が多いため、安全教育は受入れの最重要事項です。多言語での安全マニュアルの作成、実地訓練の計画、緊急時の連絡体制の構築を入国前から準備しておきます。

  6. 入国後のサポート計画の策定:日本語教育、生活支援、メンタルヘルスケア(特に洋上生活による孤立感への対応)などの計画を事前に立てておきます。地方・離島での生活は精神的な負担が大きいため、定期的な面談やレクリエーションの機会を意識的に設けることが定着率の向上につながります。

漁業は、日本の食文化を根底から支える産業です。担い手不足は地域社会の存続に直結し、もう「人手が足りない」では済まない段階に来ています。だからこそ受入れの成否は、来た人に続けてもらえるかにかかっています。長期の洋上操業という特殊な環境では、住まいや生活の支え、そして何より船の上で築く信頼関係があるかどうかで、人が残るかが決まります。一緒に海に出る仲間として迎え、技術を次の世代に引き継いでもらう——そこを本気で用意できる漁協・漁業者に、人は定着します。数々の現場を見てきた私たちが、いちばん確かだと言い切れるのは、そこです。


> ご注意: 本記事の内容は2026年2月時点の公開情報に基づいています。在留者数データの出典は出入国在留管理庁(令和7年12月末/2025年12月末時点の公表資料)です。育成就労法は2027年4月1日に施行されます。分野ごとの具体的な運用方針等については、今後の政省令の整備により詳細が定まる場合があります。最新の情報は、出入国在留管理庁および厚生労働省の公式発表をご確認ください。

この分野のキャリアパス

この分野で利用可能な在留資格のステップです

育成就労
最長3年
技能を育成しながら就労
特定技能1号
最長5年
即戦力として就労
特定技能2号
期間制限なし
熟練技能・家族帯同可

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