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飲食料品製造業は、私たちの食卓を支えるあらゆる「食品の製造・加工」を担う分野です。具体的には、水産加工(干物・練り製品・冷凍水産物など)、食肉加工(ハム・ソーセージ・焼肉用カット肉など)、惣菜製造(弁当・おにぎり・サラダなど)、パン・菓子製造、缶詰・瓶詰製造、飲料製造、調味料製造まで、対象となる業種は広い。
この分野は、特定技能制度において全分野で最も多くの外国人を受け入れている分野の一つです。その背景には、国内の食品製造業が慢性的な人手不足に悩まされていることがあります。コンビニ弁当、スーパーの惣菜、冷凍食品——これらの需要は年々拡大する一方で、地方の食品工場や水産加工場では日本人の応募が極端に少ない状況が続いています。
2027年4月に施行される育成就労制度でも、飲食料品製造業は対象17分野のひとつとして選ばれており、今後この分野で働く外国人材はさらに増える。「うちの工場でも外国人を雇えるのだろうか」と検討し始めた経営者・工場長の方に向けて、この分野のリアルな現状と実務のポイントを解説します。
飲食料品製造業における外国人材の受入れ状況は、以下のとおりです。
特定技能1号の飲食料品製造業分野では、「飲食料品製造業技能測定試験」への合格が必要です。この試験は国内外で実施されており、海外からの直接採用ルートも整備されています。
育成就労制度および特定技能制度における飲食料品製造業の受入れ見込み人数は、政府の分野別運用方針により以下のとおり設定されています。
育成就労と特定技能1号を合わせた分野全体の受入れ見込み数は194,900人であり、全分野のなかでもトップクラスの規模です。政府がこの分野における外国人材の必要性を強く認識していることを示しています。なお、育成就労は最長3年、特定技能1号は5年間と対象期間が異なるため、単純な数字の比較には注意が必要です。
出典:2026年1月23日閣議決定「特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針」
育成就労制度は3年間の育成期間を経て特定技能1号への移行を前提としているため、育成就労から特定技能1号、さらに特定技能2号へとステップアップしていくキャリアパスが想定されています。つまり、育成就労で受け入れた外国人が長期戦力として定着する可能性がある分野です。
飲食料品製造業は、主要な外国人受入れ制度のすべてに対応しています。
| 制度 | 対応 | 備考 |
|---|---|---|
| 技能実習 | ○ | 水産加工、食品製造等の職種で受入れ実績あり |
| 育成就労 | ○ | 2027年4月施行。技能実習からの移行措置あり |
| 特定技能1号 | ○ | 飲食料品製造業技能測定試験の合格が必要 |
| 特定技能2号 | ○ | 熟練技能者として在留期間の上限なし。家族帯同も可能 |
特定技能2号への移行が認められている点は大きなポイントです。2号になると在留期間の上限がなくなり、家族の帯同も認められます。優秀な外国人材に「ずっとこの工場で働いてもらう」ことが制度上可能になるということです。
先に、はっきりさせておきます。これは「どの国の人が食品製造に向いているか」という話ではありません。国籍で向き不向きを決めるのは、採用の判断基準として不適切ですし、法令上も問題になりえます。配置も育成も、国籍ではなく本人の経験・日本語の習熟度・希望で決めてください。そのうえで、国によって事前にすり合わせておく実務上の配慮が変わることはある。そこだけ、具体的に押さえます。
飲食料品製造業で働く外国人は、ベトナム出身者が中心で、ミャンマー、インドネシア、中国、ネパールからの受入れもあります。
国籍の情報は「人数の傾向」と「配慮すべき実務」を知るためのもので、採用の合否や向き不向きを決めるためのものではありません。ここを取り違えると、国籍を理由にした差別的な取り扱いになり、法令上のリスクを抱えます。
「食品工場の仕事」と聞くと、単純作業の繰り返しをイメージする方も多いかもしれません。しかし、実際に働いている外国人材からは、意外なほどポジティブな声が上がっています。
「自分が作ったものがお店に並ぶのが嬉しい」——コンビニ向けの弁当工場で働くベトナム人の女性は、近くのコンビニで自分が盛り付けた商品を見つけたとき、家族にビデオ通話で見せたそうです。日本の「食」に関わる仕事は、母国の家族にも伝わりやすく、誇りを持ちやすい仕事だといえます。
また、食品製造は技能の積み重ねが目に見えやすい分野でもあります。包丁の使い方、盛り付けの速度、品質チェックの精度——経験を積むほど「自分がうまくなっている」ことを実感しやすく、モチベーションの維持につながります。特に水産加工の分野では、魚のさばき方や切り身の技術が上達することで、特定技能試験の実技にも直結するため、日々の仕事がそのまま試験対策にもなります。
さらに、食品工場は空調が管理された室内環境であることが多く、屋外作業が中心の農業や建設業と比べて、天候に左右されない安定した就労環境が確保されている点も、外国人材にとっての魅力のひとつです。
食品工場では、衛生管理上の指示を正確に伝える必要があります。「手を洗ってください」「この温度を超えたら報告してください」といった指示が正確に伝わらないと、食品事故につながるリスクがあります。
対処法:作業手順書を母国語に翻訳するだけでなく、写真やイラスト入りのビジュアルマニュアルを作成する工場が増えています。また、重要な衛生ルール(手洗いのタイミング、温度管理の基準値など)はピクトグラムで掲示し、言語に依存しない伝達手段を併用するのが効果的です。
インドネシアやバングラデシュ出身のイスラム教徒の方を受け入れる場合、豚肉やアルコール原料を扱う工程への配置が問題になることがあります。また、ラマダン(断食月)の期間中は日中に食事を取らないため、体力面での配慮が必要なケースもあります。
対処法:採用前に、工場で扱う原材料と作業内容を具体的に説明し、本人の意思を確認する。ここを飛ばすと配置後にトラブルになる。礼拝の時間確保については、休憩時間を柔軟に調整している工場もあります。ある惣菜工場では、空き会議室を礼拝スペースとして開放したところ、インドネシア人スタッフの定着率が大幅に向上したという事例があります。
食品工場は、出荷スケジュールに合わせた早朝勤務(午前4時〜5時始業など)やシフト制が一般的です。来日して間もない外国人にとって、生活リズムの大きな変化は体調面・精神面に影響しやすいポイントです。
対処法:入社後1〜2週間は日勤からスタートし、段階的に早朝シフトに移行するといった配慮が有効です。また、通勤手段の確保(自転車の貸与、送迎バスの運行など)も定着率に大きく影響します。地方の工場では公共交通機関が限られるため、通勤支援は必須の検討項目です。
水産加工や冷凍食品の製造では、0℃以下の環境で長時間作業するケースがあります。東南アジア出身の方にとって、寒冷環境は身体的にも心理的にも大きな負担になり得ます。
対処法:防寒着・防寒手袋の支給はもちろん、定期的な休憩と温かい飲み物の提供、寒冷環境での作業時間の上限設定などを就業規則に明記しておくと安心です。
外国人材の受入れに際して、「日本人スタッフとうまくやっていけるか」という不安を持つ経営者は少なくありません。しかし、実際に受け入れた工場からは、むしろ職場にプラスの変化が生まれたという声が多く聞かれます。
ある北海道の水産加工場では、ベトナム人技能実習生の受入れをきっかけに、それまで口頭だけで伝えていた作業手順を文書化・マニュアル化したところ、日本人パートスタッフからも「わかりやすくなった」と好評だったそうです。外国人に伝わるように工夫した結果、日本人にとっても働きやすい職場になるという副次的効果が生まれたわけです。
また、「外国人の若い子たちが一生懸命働いている姿を見て、自分たちも頑張ろうという気持ちになった」というベテラン日本人スタッフの声もあります。特に高齢化が進む地方の食品工場では、20代〜30代の外国人材が加わることで、職場全体の活力が回復するケースが報告されています。
一方で、導入初期にはコミュニケーションの負担が日本人スタッフに偏りがちです。受入れ前に社内説明会を開き、外国人材の文化的背景や基本的なコミュニケーション方法を共有しておくことで、現場の戸惑いを軽減できます。
飲食料品製造業で外国人材の受入れを考えるなら、まず以下のステップから始める。
食品工場の人手不足は、もう一時的なものではない。だが外国人材は、足りない頭数を埋めるためだけの存在ではない。自分が盛り付けた弁当が店に並ぶ。魚をさばく手が速くなる。その実感が、定着とやる気を生む。来てくれた人が技能を積み、長く働ける現場をつくる。それができた工場から、ラインは安定し、強くなっていく。制度の全体像をまず把握したい方は、育成就労制度の基本解説記事もあわせてご覧ください。
※本記事は2026年2月時点の公開情報に基づいて作成しています。在留者数データの出典は出入国在留管理庁(令和7年12月末/2025年12月末時点の公表資料)です。育成就労法は2027年4月1日に施行されます。受入れ見込み人数や転籍制限期間等の数値は、分野別運用方針に基づくものであり、今後の政省令の整備や運用方針の見直しにより変更される場合があります。最新の情報は、出入国在留管理庁および厚生労働省の公式発表をご確認ください。
この分野で利用可能な在留資格のステップです