目次
この分野について
航空分野は、育成就労制度の対象外です。外国人材の受入れには特定技能制度を利用します。
航空分野は、空港グランドハンドリング(手荷物・貨物の取扱い、航空機の誘導・けん引等)と航空機整備(機体・エンジン等の整備・点検)の2つの業務区分で構成される分野です。日本の空の玄関口を支える、なくてはならない仕事です。
コロナ禍で国際線がほぼ停止した2020年〜2022年、航空業界は大量の人員削減を余儀なくされました。その後、インバウンド需要の急回復により旅客数はコロナ前の水準に戻りつつありますが、一度離れた人材は簡単には戻ってきません。特にグランドハンドリング業務は、重い手荷物の積み下ろし、炎天下や極寒のなかでの屋外作業、24時間シフトなど、体力的に厳しい労働環境が敬遠され、国内での人材確保が極めて困難な状況が続いています。
こうした深刻な人手不足を背景に、航空分野は2024年4月に特定技能制度の対象分野に新たに追加されました。グラウンドハンドリング業務においては技能実習での受入れ実績があります。ただし、育成就労制度(2027年4月施行)においては対象外です。したがって、航空分野で外国人材を受け入れるには、特定技能制度を活用することが唯一のルートとなります。この点は、他の多くの分野とは大きく異なる航空分野の最も重要な特徴です。
現状データ
航空分野における外国人材の受入れ状況を整理します。
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特定技能1号「航空」の在留者数:2,260人(出入国在留管理庁、令和7年12月末時点・速報値)。制度開始が2024年4月と新しいにもかかわらず、空港の深刻な人手不足を背景に着実に受入れが進んでいます。
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技能実習「航空」の在留者数:105人(出入国在留管理庁、令和6年12月末時点。グラウンドハンドリング業務が対象)
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育成就労「航空」:該当なし(航空分野は育成就労の対象外)
航空分野は特定技能制度への追加自体が2024年4月と日が浅いため、他の分野のように技能実習からの移行組が大量にいるという状況ではありません。海外で実施される特定技能評価試験に合格した人材が直接入国するルートが中心となります。制度としてはまだ立ち上がりの段階であり、今後の受入れ人数の推移が注目されます。
主な送出国と傾向:航空分野は制度開始が新しく、十分なデータの蓄積がまだありません。他の分野の傾向を踏まえると、ベトナム、フィリピン、インドネシアなどからの受入れが中心になると予想されますが、今後の動向を注視する必要があります。空港業務という特殊性から、英語力を持つフィリピン人材が評価される可能性も指摘されています。
今後の受入れ見込み
航空分野は育成就労制度の対象外であるため、受入れ見込み人数は特定技能制度の枠組みで設定されています。
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育成就労の受入れ見込み人数:対象外(航空分野は育成就労制度の対象分野に含まれていません)
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特定技能1号の5年間受入れ見込み人数:4,900人(2024年度から5年間の上限)。コロナ後のインバウンド回復に伴い、空港オペレーションの人手不足は年々深刻化しており、受入れ枠の活用が急がれています。
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政府が想定するタイムライン:
- 2024年4月:特定技能制度の対象分野に航空が追加、受入れ開始
- 2024年〜:海外試験の実施体制の整備、送出国との連携構築
- 2027年4月以降も、航空分野は育成就労ではなく特定技能制度での受入れが継続
育成就労の対象外であることは、受入れにあたって重要なポイントです。育成就労では監理支援機関がサポートする仕組みがありますが、航空分野ではこのルートが使えません。特定技能制度に基づき、受入れ企業自身または登録支援機関を通じて外国人材の支援を行う必要があります。
制度対応表
航空分野における外国人受入れ制度の対応状況は以下のとおりです。育成就労が対象外である点に特にご注意ください。
| 制度 | 対応 | 備考 |
|---|---|---|
| 技能実習 | ○ | グラウンドハンドリングで受入れあり(R6末105名在留)。航空機整備は対象外 |
| 育成就労 | × | 対象外。航空分野は育成就労の対象分野に含まれていない |
| 特定技能1号 | ○ | 2024年4月追加。空港グランドハンドリングと航空機整備の2区分 |
| 特定技能2号 | ○ | 熟練した技能を持つ人材が対象。在留期間の上限なし、家族帯同可能 |
重要なポイント:航空分野では、グラウンドハンドリング業務において技能実習による受入れ実績があります。育成就労は対象外です。外国人材を受け入れる唯一のルートは特定技能制度です。このため、育成就労のように3年間かけて「育てる」制度設計にはなっておらず、即戦力に近い人材を特定技能1号で受け入れるという形になります。企業としては、海外試験に合格した人材のなかから自社に合った人材を選考し、入社後は自社内でのOJTと支援体制を整える必要があります。
この分野で働く外国人の国籍傾向
先に、はっきりさせておきます。これは「どの国の人が空港業務に向いているか」という話ではありません。国籍で向き不向きを決めるのは、採用の判断基準として不適切ですし、法令上も問題になりえます。配置も育成も、国籍ではなく本人の経験・技能・日本語の習熟度・希望で決めてください。そのうえで、国によって事前にすり合わせておく実務上の配慮が変わることはある。そこだけ、具体的に押さえます。
航空分野は2024年に特定技能の対象へ追加されたばかりで、データの蓄積は始まったところです。現時点ではフィリピン・ベトナム・ネパールからの受入れが目立ち、特定技能評価試験の合格者数ではフィリピンが多くなっています。
- 送り出しの実績(人数の傾向) — フィリピンは英語が公用語のひとつで、航空関連産業で働いた経験を持つ人材が一定数います。ベトナムは他分野で最大の送出国、インドネシアは航空需要が旺盛で国内の空港勤務経験者もいる、といった背景があります。これは「どの国が優秀か」ではなく、送出体制や関連業務の経験の積み上がりといった構造の話として読んでください。国際空港の業務では英語を使う場面もありますが、それは出身国ではなく本人がどの言語をどこまで使えるかで判断してください。
- 宗教・食習慣への配慮 — イスラム教を信仰する方を受け入れるなら、礼拝時間の確保や食事への配慮を、採用前に本人と詰めておきます。配慮の度合いは人によって違い、出身国でひとくくりにはできません。
- 語学と業務のかけ合わせ — 空港業務は安全に直結する指示・確認が多く、英語が使われる場面もあります。求められるのは「どの国の出身か」ではなく、本人がどこまで日本語・英語を使えるか。来日前の学習歴も人によって差があるので、個別に確認し、伸ばす前提で受け入れます。
国籍傾向は今後数年のデータの蓄積を待つ必要があります。特定の国籍にこだわるよりも、試験の合格実績やコミュニケーション能力、空港業務への適性を総合的に判断して選考してください。国籍を理由にした差別的な取り扱いは、法令上のリスクを抱えます。
意外と知られていないこの仕事の魅力
「空港の仕事」と聞くと、華やかなイメージの裏にある体力仕事が敬遠されがちですが、実際に働く人々からはポジティブな声も多く聞かれます。
「飛行機を間近で見られる仕事」。グランドハンドリングの現場では、目の前で航空機が離発着する迫力ある環境で働くことができます。航空機好きにとっては、毎日が刺激的な職場です。航空機の誘導(マーシャリング)を担当するスタッフが、大型機を安全に駐機位置まで導く姿は、空港オペレーションの花形とも言えます。
国際的な環境で働ける。空港は世界中の航空会社の便が発着する国際的な場所です。世界中の旅客やクルーと日常的に接する環境は、外国人材にとって母国と日本の「架け橋」を実感できる職場でもある。英語やその他の言語が活かせる場面も多く、語学力がキャリアの武器になります。
チームワークの達成感。航空機の出発は分刻みのスケジュールで進みます。手荷物の積み込み、機内清掃、燃料補給、ケータリングの搬入など、複数のチームが連携して一機の出発を支えます。限られた時間内にすべてのオペレーションを完了させたときの達成感は、他の仕事ではなかなか味わえないものです。
航空機整備の高度な専門性。航空機整備は、乗客の命を預かる高い責任感が求められる仕事です。機体やエンジンの点検・整備を通じて、世界最高水準の技術を学ぶことができます。航空整備の技能は世界的に需要が高く、日本で経験を積むことで国際的なキャリアにもつながる可能性があります。
現場でよくある課題と対処法
保安区域での勤務
空港のグランドハンドリング業務は、一般の人が立ち入ることのできない保安区域(制限区域)で行われます。保安区域に入るには空港保安証が要る。身元確認や適性検査も通す。この手続き自体が、外国人材にとって最初のハードルになる。
対処法:受入れ企業が空港保安証の取得手続きを早期に開始し、必要書類の準備を外国人材と一緒に進める。ここで遅れると入社日がずれる。保安区域でのルール(持ち込み禁止物、行動制限、ID携帯義務など)については、母国語で分かりやすく説明した資料を用意しておきましょう。
24時間シフト体制への適応
空港は365日24時間稼働しています。早朝便に合わせた深夜3時出勤、深夜便の対応による深夜勤務など、不規則なシフトに適応する必要があります。外国人材にとっては、日本の生活リズムに慣れると同時に、不規則な勤務体制にも順応しなければならない二重の負担が生じます。
対処法:入社初期はできるだけ規則的なシフトから始め、段階的に変則シフトへ移す。体が慣れる前に深夜を重ねると、離職につながりやすい。シフト表を早めに共有し、母国語での説明を添えること、体調管理のアドバイス(睡眠の取り方、食事のタイミングなど)を提供することも有効です。
体力的な負担
グランドハンドリングは、重い手荷物やコンテナの積み下ろし、炎天下の夏季や極寒の冬季における屋外作業など、体力的にハードな仕事です。特に夏の空港エプロン(駐機場)はアスファルトの照り返しで気温が50度近くに達することもあります。
対処法:熱中症対策、防寒対策を企業として徹底すること。水分補給の時間をルールで区切り、体調不良をその場で申告できる空気をつくる。我慢が事故を招く。また、重量物の取扱いに関する安全教育(腰痛予防の正しい持ち方など)を母国語でも実施してください。
専門用語とコミュニケーション
空港業務では「タキシング」「プッシュバック」「ランプ」「コンテナドーリー」「ULD」など、航空業界特有の専門用語が飛び交います。加えて、無線やインカムを使ったコミュニケーションが日常的に行われるため、騒音環境下での聞き取り能力も必要です。
対処法:航空業界の基本用語を日本語・英語・母国語の3か国語でまとめた用語集を作成し、入社前の研修で活用する。無線通信のフレーズは定型的なものが多い。パターン練習を繰り返せば、短期間で身につく。英語が通じる場面も多いため、英語力のある人材はコミュニケーション面でのアドバンテージがあります。
各種免許・社内資格の保有が必須
空港のグランドハンドリング業務では、業務遂行に各種免許・資格の保有が必須となります。具体的には次のとおりです。
- 自動車運転免許:空港内の構内車両(牽引車・トーイングトラクター・ベルトローダー等)を運転するには、まず日本の普通自動車運転免許が必要です。
- フォークリフト運転技能講習修了証:1t 以上のフォークリフトを扱う場合に必須。
- 空港内構内運転認定:各空港・各事業者が定める社内資格。OJT を経て段階的に取得します。
- 特殊車両ごとの操作認定:プッシュバックトラクター、コンテナドーリー、ベルトローダー等、扱う機材ごとに社内認定が必要です。
対処法:採用選考段階で本人の保有免許を確認し、入国後に日本の運転免許への切替や追加講習が必要かを早期に判断します。外国免許からの日本免許切替には適性検査・知識確認・実技試験等の手続きが必要で、おおむね 1〜3 か月かかります。社内資格は OJT で順次取得していくため、研修期間中の業務範囲を明確に定義しておくと、本人も上司も役割を見通しやすくなります。
一緒に働く日本人スタッフへの影響
航空分野への外国人材の受入れはまだ始まったばかりですが、他の分野での経験を踏まえると、以下のような影響が予想されます。
人手不足の緩和による業務負荷の軽減。これが最も直接的なプラス効果です。コロナ後の人手不足により、日本人スタッフには過重な業務負荷がかかっています。外国人材の受入れにより人員が補充されれば、一人あたりの負担が軽減され、労働環境の改善につながることが期待されます。
多言語対応力の向上。国際空港では外国人旅客への対応が日常的に求められます。外国人スタッフがチームにいることで、多言語でのコミュニケーション力が強化され、サービス品質の向上に寄与する可能性があります。
安全意識の再確認。外国人材に安全教育を行う過程で、日本人スタッフ自身も安全手順を改めて確認する機会が生まれます。「教えることで自分も学ぶ」という効果は、安全が最優先される航空業界では特に重要な意味を持ちます。
受入れ初期の負担は覚悟が必要。航空業務は安全上のルールが厳格であり、OJTの密度が高くなります。指導を担当する日本人スタッフには追加の負荷がかかる。シフトを軽くする、指導手当を出す、といった手当てを企業が用意する。
この分野特有のルールと注意点
航空分野には、空港という特殊な環境ゆえの独自のルール・注意点があります。
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育成就労は対象外:最も重要な注意点です。航空分野は育成就労制度の対象分野に含まれていないため、監理支援機関を通じた受入れはできません。外国人材の受入れには特定技能制度を利用します。
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特定技能評価試験:特定技能1号の取得には、航空分野特定技能評価試験(空港グランドハンドリングまたは航空機整備)への合格が必要です。試験は海外でも実施されます。
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空港保安証の取得:保安区域で業務を行うための空港保安証が必要です。取得には身元確認や適性検査があり、手続きに一定の期間を要します。受入れスケジュールを立てる際には、この期間を見込んでおく必要があります。
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登録支援機関の活用:育成就労の監理支援機関は使えないため、特定技能外国人の支援は受入れ企業自身が行うか、登録支援機関に委託することになります。空港業務の特殊性を理解した登録支援機関の選定が重要です。
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転籍制限期間:航空分野は育成就労の対象外のため、育成就労における転籍制限の概念は適用されません。特定技能1号では、分野内での転職は制度上可能です。
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24時間体制への対応:空港の稼働時間に合わせた不規則な勤務シフトが前提となります。労働基準法に基づく適切な労務管理(深夜手当、休日の確保など)の徹底が求められます。
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航空法・航空保安に関する遵守事項:空港の保安区域では航空法に基づく厳格なルールが適用されます。禁止行為や報告義務について、外国人材にも確実に理解させる必要があります。
受入れを始めるには
航空分野で外国人材の受入れを検討する場合、他の多くの分野とは異なるルートをたどることになります。以下のステップを参考にしてください。
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特定技能制度での受入れであることを確認する:航空分野は育成就労の対象外です。外国人材は特定技能1号の在留資格で受け入れます。育成就労のように「3年間かけて育てる」制度設計ではなく、一定の技能と日本語能力を持つ人材を受け入れる形です。
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受入れ計画の策定:どの業務区分(空港グランドハンドリングまたは航空機整備)で、何名の外国人材を、いつまでに受け入れるかを計画します。空港保安証の取得にかかる期間も考慮に入れてください。
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登録支援機関の選定:特定技能外国人への支援(入国前の情報提供、住居の確保、生活オリエンテーション、相談対応など)を自社で行うか、登録支援機関に委託するかを検討します。航空業界の特殊性を理解した登録支援機関が望ましいです。
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人材の確保:海外で実施される航空分野特定技能評価試験の合格者から採用するか、国内の留学生等で試験に合格した人材を採用するかなど、人材確保のルートを検討します。送出国との連携体制がまだ十分に整っていない段階であるため、採用活動には余裕を持ったスケジュールが必要です。
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社内体制の整備:保安区域での勤務に必要な教育訓練プログラム、24時間シフトへの対応、安全教育体制、日本語学習の支援体制などを整えます。
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日本人スタッフへの説明:外国人材と一緒に働くことについて、既存スタッフへの丁寧な説明を行います。人手不足の緩和というメリットを具体的に伝えることで、受入れに対する理解を得やすくなります。
航空分野は、育成就労の対象外という点で他の分野とは異なる受入れ環境にあります。しかし、特定技能制度を正しく活用すれば、深刻な人手不足の解消に向けた有効な手段となります。制度がまだ新しいからこそ、早期に受入れ体制を整えた企業が先行者利益を得られる分野とも言えます。空港は、止められない。便を時刻どおり飛ばし続けるには、エプロンと格納庫を回す人がいる。航空分野で外国人材を受け入れることは、その現場を一緒に支える仲間を迎えることだ。来てくれた人が日本の空港で長く働けるようにする。それができれば、人手不足は越えられる。
> ご注意: 本記事の内容は2026年2月時点の公開情報に基づいています。最新の情報は出入国在留管理庁および厚生労働省の公式発表をご確認ください。
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