造船・舶用工業分野

日本の海洋産業を守る——造船・舶用工業で外国人技能人材を迎えるための実践知識

造船・舶用工業分野での技術継承が課題となっています。

育成就労特定技能1号特定技能2号公開 2026年6月
約8,500
特定技能 在留外国人数
出入国在留管理庁 令和6年12月末 🟡推定値
23,400
受入見込数・特定技能(5年間)
2025年閣議決定 2026〜2030年度
13,500
受入見込数・育成就労(5年間)
2025年閣議決定 2026〜2030年度
INDUSTRY INDEX造船・舶用工業分野の採用特性インデックス
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採用難易度4/5

採用競争が激しい分野です

採用コスト3/5
採用スピード2/5

時間がかかる傾向があります

定着率4/5

長期定着が見込めます

※ グロジョブ編集部が業界平均を基に作成した参考指標です。個社の状況により異なります。

目次

この分野について

造船・舶用工業は、船舶の建造・修繕、および船に搭載される機器(舶用機器)の製造を担う産業です。日本は韓国・中国とともに世界三大造船国の一つに数えられ、特にLNG運搬船や自動車専用船などの高付加価値船舶の建造技術では世界トップクラスの実力を持っています。

主な業務内容は、溶接、塗装、鉄工(鋼材の切断・加工・組立)、仕上げ、機械加工、電気機器組立てなど多岐にわたります。一隻の船を建造するには何十万点もの部品と何千人もの作業員が必要であり、造船は「総合組立産業」とも呼ばれます。溶接ひとつとっても、船体の構造を支える重要な工程であり、高い技術力と品質管理が求められます。

造船所の多くは地方に立地しています。愛媛県今治市・西条市、長崎県長崎市・佐世保市、広島県尾道市・呉市、香川県丸亀市、大分県臼杵市など、瀬戸内海沿岸や九州を中心とした「造船の町」が日本各地に点在しています。こうした地域では、造船業が地域経済の中核を担っている一方で、若年層の都市部流出により深刻な人手不足が続いています。国際競争力を保ち、受注した船を納期どおりに仕上げる。そのために外国人材はもはや欠かせない。

現状データ

造船・舶用工業 外国人材の在留者数溶接・鉄工を中心に、早期から2号化が進む分野技能実習推定数千〜1万人特定技能1号11,204人特定技能2号336人出典:出入国在留管理庁(令和7年12月末・速報値)/技能実習は推定値

造船・舶用工業分野における外国人材の受入れ状況は以下のとおりです。

  • 技能実習生の在留者数:造船関連の技能実習生は推定で数千人〜1万人規模が日本国内で就労しています。溶接、塗装、鉄工、仕上げなどの職種で受入れが行われてきました。なお、技能実習生の総数は全分野合計で45万6,618人(出入国在留管理庁、令和7年末時点)です

  • 特定技能1号「造船・舶用工業」の在留者数11,204人(出入国在留管理庁、令和7年12月末時点・速報値)。特定技能制度のなかでは中規模の受入れ分野ですが、造船業界の人手不足を背景に着実に増加しています。特定技能(1号・2号合計)の総数は全分野合計で390,296人(令和7年12月末時点・速報値、過去最多)です

  • 特定技能2号「造船・舶用工業」の在留者数336人(令和7年12月末時点・速報値)。造船分野は2号に比較的早期から対応しており、熟練技能者として長期就労する外国人材のルートが広がっています

  • 主な送出国と傾向:造船・舶用工業分野では、ベトナム、フィリピン、インドネシアが主な送出国です。特にベトナムからの受入れが最も多く、溶接や鉄工の分野で多くのベトナム人材が活躍しています

今後の受入れ見込み

育成就労制度および特定技能制度における造船・舶用工業分野の受入れ見込み人数は、以下のとおり設定されています。

  • 育成就労の受入れ見込み人数13,500人(5年間の上限)

13,500人という数字は、造船・舶用工業分野の規模を考えると決して小さくありません。日本の造船業は企業数自体が限られており、この人数は業界全体の生産体制を維持するうえで重要な意味を持ちます。

造船所は一つの現場あたりの外国人スタッフの比率が比較的高い傾向にあり、「外国人なしでは船が造れない」という状況がすでに現実のものとなっています。育成就労制度による新たな受入れ枠の設定は、業界にとって人材確保の安定化に向けた大きな一歩です。

ただし、この人数は「上限」であり、実際にどの程度の受入れが実現するかは、送出国側の事情や各造船所の受入れ体制の整備状況によります。造船所どうしの人材獲得競争も起きる。受入れ体制を早く整えた企業ほど、優秀な人材を先に押さえられる。

制度対応表

造船・舶用工業分野は、主要な外国人受入れ制度のすべてに対応しています。

制度対応備考
技能実習溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工等の職種で受入れ実績あり
育成就労2027年4月施行。最長3年、特定技能1号への移行を前提
特定技能1号造船・舶用工業分野特定技能評価試験 or 技能検定で取得
特定技能2号熟練技能者として在留期間の上限なし。家族帯同も可能

特定技能2号まで対応しているという点は、造船・舶用工業分野の大きな特徴です。造船の技能——とりわけ溶接や鉄工——は習得に時間がかかる一方、一度身につければ極めて高い専門性を持つ職能となります。企業にとっては、何年もかけて育てた人材に長く定着してもらえる制度的な裏付けがあるということであり、外国人材にとっては「日本の造船所で腰を据えてキャリアを築く」という将来設計が可能になるということです。

この分野で働く外国人の国籍傾向

先に、はっきりさせておきます。これは「どの国の人が造船に向いているか」という話ではありません。国籍で向き不向きを決めるのは、採用の判断基準として不適切ですし、法令上も問題になりえます。配置も育成も、国籍ではなく本人の技能・経験・日本語の習熟度・希望で決めてください。そのうえで、国によって事前にすり合わせておく実務上の配慮が変わることはある。そこだけ、具体的に押さえます。

造船・舶用工業分野で働く外国人材は、フィリピン・ベトナム・インドネシアを中心に構成され、造船業が盛んな西日本(瀬戸内地域や九州)で多く活躍しています。

  • 送り出しの実績(人数の傾向) — フィリピンには大規模な造船所があり、母国で造船・溶接の経験を積んだ人材が一定数いるほか、英語が公用語のひとつでもあります。ベトナムは多くの分野で最大の送出国、インドネシアは島国で海洋産業が盛んなため造船・船舶関連の素地がある人材がいる、といった背景があります。これは「どの国が優秀か」ではなく、送出体制や関連業務の経験の積み上がりといった構造の話として読んでください。英語での技術指導が発生する現場もありますが、語学は出身国ではなく本人がどこまで使えるかで確認してください。
  • 宗教・食習慣への配慮 — イスラム教を信仰する方を受け入れるなら、礼拝時間の確保や食事への配慮を、採用前に本人と詰めておきます。配慮の度合いは人によって違い、出身国でひとくくりにはできません。
  • 語学と業務のかけ合わせ — 造船は高度な溶接技術などが求められ、図面・安全指示の理解が欠かせません。求められるのは「どの国の出身か」ではなく、本人がどこまで日本語を使えるか。来日前の学習歴も人によって差があるので、個別に確認し、伸ばす前提で受け入れます。

同じ国の出身でも技能レベルや適性は人によって大きく異なります。出身国よりも本人の技能と経験、学ぶ姿勢を重視した採用が重要です。国籍を理由にした差別的な取り扱いは、法令上のリスクを抱えます。

意外と知られていないこの仕事の魅力

造船・舶用工業は「きつい仕事」というイメージを持たれがちですが、この分野ならではの魅力があります。

「自分が造った船が海を走る」という圧倒的なスケール感。造船の仕事の最大の魅力は、何と言ってもこの点です。全長200メートルを超える巨大な船舶の建造に自分が携わり、進水式で海に浮かぶ瞬間を目の当たりにする——この体験は、他の産業ではなかなか味わえません。あるベトナム出身の溶接工は「自分が溶接した船が完成して海に出ていくとき、涙が出そうになった。ビデオを撮って家族に送った」と話しています。進水式は造船所の一大イベントであり、外国人スタッフも含めた全員で完成を祝う場となっています。

高い技術力が身につく。造船で求められる溶接技能は、製造業全体のなかでもトップレベルです。船体の構造を支える溶接は、品質基準が極めて厳格であり、ここで鍛えられた技能は他のどの製造現場でも通用します。JIS溶接技能者の資格を取得する外国人材も多く、「日本の造船所で溶接を学んだ」という経歴は、帰国後のキャリアにおいても大きな武器になります。

収入面での魅力。造船業は、技能を要する仕事が多いため、他の受入れ分野と比較しても賃金水準が比較的高い傾向にあります。特に溶接技能者は専門性が高く評価され、経験を積むにつれて収入が上がりやすい職種です。特定技能2号に移行すれば、さらに処遇の向上が期待できます。

チームで一つのものを造り上げる達成感。船は一人では造れません。溶接工、塗装工、鉄工、配管工、電気工——さまざまな職種のスタッフが連携して、一隻の船を完成させます。このチームワークの醍醐味は、造船ならではの魅力です。国籍を超えてチームで仕事をやり遂げた経験は、外国人材にとってもかけがえのない財産になります。

現場でよくある課題と対処法

安全管理の徹底

造船所は、高所作業、狭隘部(船体内部の狭い空間)での作業、溶接による火花やヒューム(溶接煙)、塗装に伴う有機溶剤の取り扱いなど、危険を伴う作業が日常的に発生する環境です。労災の発生リスクは製造業のなかでも高い部類に入ります。

対処法:安全教育は母国語の資料で、入構前にやり切る。ここを飛ばすと事故に直結する。「ヘルメット」「安全帯」「火気厳禁」「立入禁止」など、命に関わる日本語から先に教える。造船所独自の安全ルール(入構時のKY活動、作業前の指差し確認、火気使用時の養生手順など)を多言語で掲示し、毎朝の朝礼でも確認する体制が不可欠です。ある長崎県の造船所では、安全に関する重要ワードを8か国語で記載したポケットカードを全作業員に配布し、常時携帯を義務づけています。

高い技能要件と育成期間

造船で求められる技能——特に溶接——は、一朝一夕で身につくものではありません。船体構造を支える溶接は、品質検査で不合格になれば全てやり直しになるほど厳格な基準が設けられています。外国人材が一人前の溶接工として戦力になるまでには、相応の育成期間が必要です。

対処法:OJT任せにしない。座学と実技を組み合わせた育成プログラムを組む。多くの造船所では、入社後3〜6か月は訓練期間として位置づけ、ベテラン技能者がマンツーマンで指導する体制を組んでいます。溶接の技能検定やJIS溶接試験の合格を目標に設定し、段階的にスキルアップを図る仕組みが効果的です。「試験に受かった」という成功体験がモチベーションの維持につながります。

地方立地に伴う生活環境

造船所は港湾に面した地方に立地しているため、都市部と比べて生活の利便性が低いことが多いです。公共交通機関が限られ、日用品の買い物や医療機関へのアクセスが不便な地域もあります。母国の家族との通信環境(Wi-Fi)の確保も重要な生活インフラです。

対処法:社員寮や社宅の整備が事実上必須です。Wi-Fi環境の完備は、外国人材にとって家族との連絡手段として極めて重要です。日用品の買い出しのための社用車の貸し出しや定期的な送迎、近隣の国際交流協会との連携、休日の過ごし方のサポートなど、生活面のケアが定着率に直結します。ある愛媛県の造船所では、週末に外国人スタッフ向けの日本語教室と交流イベントを開催し、地域との結びつきを深める取り組みを行っています。

季節・天候の影響

造船所のドック(船渠)や船台での作業は、屋外環境に近い状態で行われることが多く、夏の猛暑や冬の寒風、雨天時の作業など、季節・天候の影響を大きく受けます。特に東南アジア出身のスタッフにとって、冬場の海風にさらされながらの作業は身体的に大きな負担です。

対処法:夏場は熱中症対策(こまめな休憩、水分・塩分補給、空調服の支給)を徹底し、冬場は防寒具(防寒作業着、保温インナー、手袋等)の支給と体調管理への配慮が求められます。季節ごとの注意事項は母国語の資料で配り、無理をさせない。体調を崩されては元も子もない。

一緒に働く日本人スタッフへの影響

造船所における外国人材の受入れは、日本人スタッフにもさまざまな変化をもたらしています。

技能伝承の担い手が生まれる。造船所のベテラン技能者の高齢化は深刻な問題ですが、日本人の若手入職者は年々減少しています。そのなかで、外国人材がベテランの技能を受け継ぐ存在として期待されるようになっています。ある広島県の造船所では「日本人の若手が入ってこないなか、ベトナム人の溶接工が5年かけて一人前になり、今ではうちのエース級。技能検定1級にも合格した」という事例があります。ベテラン技能者が「自分の技を若い外国人に伝える」という役割を得たことで、定年間近のスタッフにも新たなやりがいが生まれています。

職場の国際化が進む。造船所は同じ現場に多国籍の作業員が集まることが多く、日本人スタッフも自然と異文化に触れる機会が増えます。「最初は言葉が通じなくて不安だったが、仕事をする中で信頼関係ができた」という声は多くの造船所で聞かれます。ベトナム料理やフィリピン料理の差し入れが休憩時間に並ぶ光景も珍しくなく、食を通じた異文化交流が自然と生まれています。

懸念への対応も必要。一方で、「安全に関わる指示が確実に伝わるのか」「品質基準を維持できるのか」という不安を持つ日本人スタッフもいます。特に溶接のように品質が船の安全に直結する工程では、こうした懸念は当然です。受入れ前に、外国人材の育成計画と品質管理体制を日本人スタッフにも共有する。「なぜ受入れるのか」「どう育てるのか」を、先に言葉で伝えておく。それが現場の不安を解く。

この分野特有のルールと注意点

造船・舶用工業分野には、他の分野にはない独自の要件がいくつかあります。

  • 転籍制限期間:育成就労制度における造船・舶用工業分野の転籍制限期間は、2年(2026年1月23日閣議決定により確定)。企業判断で1年に短縮可能ですが、その場合は待遇向上(昇給等)の義務が生じます。

  • 造船・舶用工業分野特定技能評価試験:特定技能1号への移行にはこの試験の合格が必要です。溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立ての各業務区分に応じた試験が実施されます。実技試験の比重が大きく、日常業務での技能の積み重ねが試験対策に直結します

  • 業務区分の確認:造船・舶用工業分野は複数の業務区分に分かれています。溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立てなど、自社の主要業務がどの区分に該当するかを事前に確認する必要があります

  • 安全衛生教育の義務:造船所は労災リスクが高い環境であるため、労働安全衛生法に基づく雇入れ時教育、作業内容変更時の教育、特別教育(アーク溶接、ガス溶接、高所作業、酸素欠乏危険作業等)の実施が法令で義務づけられています。外国人材にも日本人と同等の安全教育を、理解できる形で実施する義務があります

  • 特定技能2号への道:造船・舶用工業分野は特定技能2号の対象です。2号への移行には、監督者としての実務経験と、技能検定1級相当の試験への合格等が要件として想定されています。造船の高度な技能を持つ外国人材が、在留期間の制限なく日本で長期的に活躍できるキャリアパスが制度上用意されています

  • 船級協会の品質基準:造船所では、日本海事協会(ClassNK)をはじめとする船級協会の品質基準を満たす必要があります。特に溶接工程は船級協会の検査対象であり、外国人溶接工も同じ基準をクリアする必要があります。船級溶接士の資格取得を目標として育成プログラムに組み込んでいる造船所もあります

受入れを始めるには

造船・舶用工業分野で外国人材の受入れを検討する場合、以下のステップで進めるのが一般的です。

  1. 自社の業務区分を確認する:造船・舶用工業分野の業務区分は、溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立てなど複数に分かれています。自社の主要業務がどの区分に該当するかを確認してください

  2. 監理団体(育成就労施行後は「監理支援機関」に移行)に相談する:育成就労制度では、監理支援機関を通じた受入れが基本です。造船・舶用工業分野の受入れ実績がある機関を選ぶことが重要です。造船所が集まる地域には、造船分野に特化した監理支援機関もあります

  3. 受入れ体制を整備する:育成就労責任者の選任、住居(社員寮等)の確保、安全衛生教育の準備、OJT指導者の配置など、受入れ前の準備を進めます。造船所の場合、入構前の安全教育は特に念入りに計画する必要があります

  4. 技能育成計画を策定する:造船の技能習得には計画的なOJTが不可欠です。溶接であれば、どのレベルまで何か月で到達させるか、技能検定やJIS溶接試験の受験スケジュールをどう組むか、といった具体的な育成計画を策定します

  5. 生活支援体制を整える:地方立地の造船所では、住居の確保に加えて、通勤手段、買い物・医療機関へのアクセス、Wi-Fi環境、休日の過ごし方のサポートなど、生活面のケアが定着率を大きく左右します。地域の国際交流協会との連携も有効です

一隻の船は、一人では造れない。溶接も塗装も鉄工も、何千人もの手が重なって海に出ていく。その現場に、いま国境を超えた人材が当たり前に並んでいる。造船の技は、覚えるのに何年もかかる。だからこそ、育てた人に長く居てもらえる制度がこの分野には揃っている。腰を据えて付き合える相手を選び、腰を据えて育てる。それが、次の一隻につながる。


> ご注意: 本記事の内容は2026年2月時点の公開情報に基づいています。最新の情報は出入国在留管理庁および厚生労働省の公式発表をご確認ください。

※在留者数データの出典は出入国在留管理庁(令和7年12月末/2025年12月末時点の公表資料)です。育成就労法は2027年4月1日に施行されます。分野ごとの具体的な運用方針等については、今後の政省令の整備により詳細が定まる場合があります。

この分野のキャリアパス

この分野で利用可能な在留資格のステップです

育成就労
最長3年
技能を育成しながら就労
特定技能1号
最長5年
即戦力として就労
特定技能2号
期間制限なし
熟練技能・家族帯同可

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